運命なんてありえない(完結)

ウォーミングアップを終え、紅白戦の準備に入る


いつもは各ポジション同士でジャンケンをして勝ったチーム負けたチームだが、今回は撮影がしやすいようにと宣材写真のメインとなるレギュラーチームとその他に分かれた




紅白戦とはいえ円陣を組むのもお決まり




「円陣ちょっと待ったー」



レギュラー陣の円陣に杏さんが走ってきて、俺の正面にいた2人の間を掻き分けて「お邪魔しまーす」とグランドに仰向けに寝転がった


一同呆気に取られていると「せーふ!ご協力ありがとうございます」と言いながらカメラを構えた


笑顔になっていく選手にシャッターを押していく


「今日の意気込みをキャプテンからおひとりずつ聞かせてもらえますかー?」


杏さんの言葉に全員の表情が引き締まる


キャプテンから順番に一言ずつ言っていく


こんな時も年功序列で俺は一番最後


回ってくるまでにじっくりと考える…今日俺が勝負を決めるための言葉




「杏さん、この紅白戦でトライ5本決めたら今日俺と飯行ってくれませんか?」




俺の言葉に男達が息を飲む




しかし杏さんからの返事がない



そこへ「ちなみに大也の15分紅白戦での最高記録は4本です」とキャプテンが補足を入れる


なるほどそこの情報が足りなかったのか


この人は本当によく人を見てるなと実感する



杏さんが答えやすいように「行ってくれます?」と問う





「…はい」





彼女の小さな返事に男達は勝利したかのような雄叫びを上げ円陣が解散となる


残された杏さんは空に向かってシャッターを押していた




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