運命なんてありえない(完結)
「ふふっ杏さんがそこまで断言するなら間違いないね。まぁ、そんなわけで一言も声をかけられないまま杏さんが卒業しちゃって、ヤケになってて大学卒業するまでは来る者拒まず去るものは追わずなこと繰り返してたけど、どれも本物の恋愛なんかじゃなかったって気付いたのは高梨グループに入ってすぐくらいに本社のラウンジで社長と杏さんが話してるのを見つけた時だった。」
あの時はまだ杏さんは荒れてて、社長にも時期が来たらとしか言われなかった
「それからは必死。社長に全部話して、社長の信頼得るためにラグビーでも通常業務でも結果残して、1年かかってやっと社長がチャンスを作ってくれたんだ」
告白の前に姿勢を正す
彼女も空気を感じたのか背筋をピンと伸ばす
「日下杏さん、俺と結婚を前提に付き合ってください」
敢えて『結婚』という言葉を使う
彼女は前の結婚できっと辛い思いをしている
もう結婚なんて考えたくないかもしれない
それでも俺とこの先ずっと一緒にいることを…結婚して家族になることを…考えて欲しいと思う
「はい」
答えを出した彼女の瞳は真っ直ぐに俺を見ている
「やったーー」
カウンターの奥から女将さんの声がして振り返る
「ちょっと女将さん!それ俺のセリフ!」
大将と2人で見守っていたみたいだけど…なんで俺より先にその言葉を言っちゃうかなぁ
街灯に照らされる街を今度は指を絡めしっかりと握り歩く
5年間の片想いを経て俺の思いは彼女に届き、大切な大切な恋人へと変わった
俺のことは信じて大丈夫
一生をかけてそれを証明する