運命なんてありえない(完結)
〜エピローグ〜
年の瀬迫る12月のとある火曜日
練習後に杏さんの家にきた
杏さんの家は1LDKで俺の寮と間取りは一緒だけど、玄関のドアを開けた瞬間から彼女の香りに包まれとても居心地が良い
「杏さん、1月の第2日曜日って仕事休めたりしない?」
杏さんのいれてくれたコーヒーを飲みながらここ数日悩んでいた話を切り出す
杏さんの仕事は日曜が忙しいことも承知している
けどどうしてもこの日でないといけない
ラグビートップリーグの決勝トーナメントの決勝は毎年1月の第2土曜か日曜
今シーズンは日曜に決まっている
まだ決勝トーナメントは始まっていないので、決勝戦に出られるかも未定だ
でも負けるつもりは皆無なのだが、杏さんの仕事のことを考えるとなかなか切り出せずにいた
テレビの横のカレンダーを眺める
どんだけ眺めても日曜日が火曜日に移動したりはしてくれない
「あ、休めるかも」
まさかの言葉に嬉しさが溢れすぎて顔に出ていたかもしれない
ポケットから2枚のチケットを取り出し「プレーオフ最終日だから来てくれないかな?」と杏さんに渡す
2枚あるのは1人で来るより、佳香さんでも誘っての方が来やすいかなと思ってのこと
「来てくれないって……大阪!?」
チケットを確認していた杏さんが眉を顰める
ラグビーをやっていれば誰もが目標とする聖地『花園』
高校の頃から幾度となく行っている、想いの詰まった場所
「ダメ?」と杏さんが断れない聞き方をする
「行くけども…佳香誘えるかなぁ…」
期待通りの返事に嬉しさのあまりタックルをかましてしまった