勘違いも捨てたもんじゃない
薄いペパーミントのバスローブがあってまだ良かった。ピンクなんか着せてしまったら…、パシッと腕を掴まれて、私をどうするつもりだ、とか言われてたかも。
やっぱり睡眠不足なのかな。…慢性的な疲労とか。疲れていても眠れない事もあるし。
高熱って訳ではなさそうだけど、怠そうだ。目の上に腕を乗せている。そうっと布団を掛けた。
水を持って来よう。……眩しいのかも知れない。
「終わりました。明かり、消しますよ?」
「…ああ」
「お水、持って来ます。あと、一応、熱も計りましょう。寝ててください」
「…ん」
どう考えてもこの現状、武蔵さんに連絡をしておいた方がいいに決まっている。明日、休みでも何かスケジュールがあるかも知れない。
【安住さんが少し具合が悪いみたいで、今、うちで休んで貰ってます。疲れからだとは思いますが。詳しい話はまた後で】
ブー、…。真希だ。
はぁ?何だとー?…浩雅。真希の部屋に?
あれからどうなったんだ、真希。これはどういう展開なんだ?
浩雅が自分の部屋に居るから、俺の居場所の確認をしたって事…か。それはどう取ればいい。…何のための確認だったんだ…。
【浩雅は寝てるのか?真希に悪さはできなさそうか?】
悪さって…。
【ぐったりしてます。多分寝てると思います。
明日は仕事とか、何も入って無いんですか?】
…無かったらどうなんだ…。そのまま休ませるのか。…そんな…。
【それは大丈夫だ。すぐ迎えに行く】
【大丈夫?】
大丈夫?…大丈夫も何も、行かなきゃ俺は呆れる程の馬鹿だろ。
【ああ。そこにずっと寝かせておく訳にはいかない】
【じゃあ、来てください】
【ああ】
…武蔵さんが来る。
…浩雅が居る。
「安住さ〜ん?熱、計りますよ?体温計、少し冷たいですよ?」
本当に…、これでは検温の為に病室に来た看護師さんの気分よ。無抵抗の安住さんの脇に挟み込んだ。何も反応がない。…眠ったのね。
一分計だ。ベッドに腰掛けて待つことにした。
ピピピ…。ん〜、熱はそんなに無いようね。平熱は解らないが、微熱程度。高熱では無い。
布団を掛け直して肩を覆った。
「…武蔵、来るのか」
…っ、…びっくりしたぁ…。
「起こしてしまいましたか?はい、連絡をしたので、もうこちらに向かっているはずです」
「あいつはここの鍵を持っているのか?」
「いいえ?」
「そうか」
「はい。…あの、いつから起きていたのですか?」
「元々、眠ってはいない」
…そうだったんですね…、色々と複雑な気分になります。 あっ。
パッと布団を捲って手を引かれ引っ張り込まれた。布団を掛けられた。
「ちょっと、あず、…安住さん?!」
「…時間が無い」
…え?何です?これって…、何、…何ーっ?!