勘違いも捨てたもんじゃない
「若、若、起きてください。…若」
…。
「若、…。起きろ、浩雅。…。浩雅ーっ!」
「ぁあ゙」
起きたか。
「起こしたぞ?いいか?寝るなよ?」
「…」
大丈夫か…、全く。
「スーツは一式そこに掛けてある」
「…解った」
「起こしたぞ?二度寝するなよ?」
「ああ…解ってる」
…ん゙ー、くそ、…上手く眠れなかった。
ベッドから出た。ボクサーパンツのみで洗面台に立った。歯磨きして着替えて、時間は…大丈夫だな。
「むしゃし?武蔵〜」
…何だよ。
「はい」
「珈琲が飲みたい」
「直ぐに持って来ます」
「ん゙」
シャカシャカと歯磨きを終わらせ、口を濯いだ。
よし。
シャツを来てスラックスを穿く。サスペンダーを肩に掛けウェストコートを着る。ネクタイは、…珈琲の後にしよう。
靴下を穿いた。
「若、どうぞ」
「ん、悪いな」
そもそも友人だったり秘書だったりと、それ程厳密に使い分けもしていない。
だから、命令口調だったり砕けたりが混ざるのはしょっちゅうだ。それはお互いにだ。わざと馬鹿丁寧に話す事もしてみる。年齢も立場も関係ない。
「ご馳走様。じゃあ、行ってくる、また後で、だ」
「財布、携帯、お持ちですか?」
「持った」
「では行ってらっしゃいませ。会社でお待ちしております」
「ん」
なんてな。
俺も早々に出ないとな。
尾行、尾行。