勘違いも捨てたもんじゃない
……いけない、いつの間に寝てしまったのだろう。気がつけばカーディガンを掛けてソファーで眠ってしまっていた。…痛たたた。…ふぅ。
起き上がってテーブルの携帯に手を伸ばした。
着信は…無い。寒い。はぁ…、風邪をひくところだった。…寝よう。もうベッドでちゃんと寝よう。部屋の明かりを消した。
冷たいベッドに潜り込んだ。
……はぁ。だから期待してはいけない。持たなくていい感情が出てくるから、だから駄目なのよ。…涙が滲む。期待するから寂しいと思ったり、どうして?なんて感情が芽生えて来る。まるで悲劇のヒロイン気取り…。今まで寂しくても泣かずに居られたのは強く期待してなかったからだったんだ。…そこを考えようとしないでいようとしていたからだ。
眠れないなりに布団の温かさにウトウトしていたと思う。
…ポン。………ん、…ん。
ピンポン。ピンポン、…。RRRR、RRRR、…。
ん…ん?いけない!インターホンも携帯も鳴っていた。…眠ってた。あっ、どっちから出たらいいの。…あ゙。手につかず携帯がゴトゴトと落ちた。
「もしもし…。はい」
電話しながら慌てて走った。鍵を開けた。
「真希…。上がるぞ」
「は、い…」
はぁ、…。ぁ…武蔵さん…。武蔵さん。玄関に走った。
鍵を開けている間にも速い足音が近づいて来ているのが解った。堪らずドアを開けた、同時に武蔵さんが来ていた。
「あ、…武蔵さん…」
「…久し振りだな、真希」
…立ち尽くした。何も感情が無いなんて嘘。
あ、あ、…。溢れてくる。
「…真希、…はぁ、真希」
抱きしめられながら部屋に押し込まれた。
「武蔵さん…会いたかった…」
来た。…狡い。どうしてこんな風にして。
「ああ、会いたかった」
…ギュッと抱きしめた。存在を確かめるようにただ抱きしめ合った。
どれだけ時間が経っただろう。
「真希…、顔をよく見せてくれ…。あぁ、くだらない我慢をし過ぎた。こうして会わなきゃ何も解らないのに」
「…私も、何を…どうしたらいいのか、何だか解らなくなって…、感情が無いんじゃないのかとか、とにかく、解らなくなって。会いたいなら押しかけたっていいのに、一方的になったって迷惑がられたって…嫌われたって、連絡だってしたらいいのに。あ、だからといって毎日特に話さなきゃいけない事があった訳じゃないの、でもね、おはようだって、おやすみなさいだけだっていい。言えばいいのに…」
「…こんなに泣かせてごめん」
…え。頬を包むようにして涙を拭われた。…私。