勘違いも捨てたもんじゃない

例え見失ったとしても向かっているのは駅。
行き先も解っている。途中下車する事も解ってる。
遠目に見ても、若の身長なら判別は出来る。携帯のGPSだってある。どうするつもりか知らないが、上手くいくといいけど。

改札を抜けるのが見えた。

ホームに並んだ。誰かを探している様子は無い。と言うより、周りが何だか緊張しているな。仕方ないか、あれでは恐い。
元々顔はキリッとしているから、あんな、険しい表情をしてしまっては、周りは敬遠もしたくなるだろう。逆に、距離を取ってくれてると思えば、あいつの身は安全は安全か。

好んで電車に乗ろうとしてるんだ…電車内に居るという事か。その後か。
しかし、この…溢れんばかりの人が乗り込んで、降りてはまた誰かが乗り込んで来て。
上手く探せるものかな。

メロディーが流れアナウンスが聞こえる。
取り敢えず、俺も乗り込まないといけない。

……ひえー、鞄なんか持って無いからいいようなものの、要領悪く、誰かと誰かに阻まれたら、俺は鞄を置き去りにするかも知れない。

痴漢と間違われないように手をあげているなんて…。元はと言えば痴漢する男が悪いんだけど、善良な男にとっては迷惑な話だ。

若とは車両が違った。
少しずつ、無理を承知で移動した。
人の乗降に併せて移動して行けば、少しずつ若に近付けるだろう。
これって、ちょっとした刑事の気分だな。

容疑者、確保、なんて冗談にでも言って掴んだら、反対に浩雅にシバかれるだろう…。
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