勘違いも捨てたもんじゃない
…はい?いや…、いやいや、…ちょ、ちょっと!
「…安住さん?…ちょ…」
「君の部屋着は脱がせ易いな」
一糸纏わずの手前。着ていた服はあっさり無くなっていた。
「こうして抱き合った方が暖かい…」
そうして抱きしめながら最後の砦の二つの内の一つ、後ろでホックが外された。スルスルと取り去られて更に抱きしめられた。
「や…ちょ…安住さん」
「…んん……暖かいだろ?」
んもう…こんなほぼ裸にされて…極端なんです!どうして、こんな風に…。
「知っているからと安易に男を部屋に入れてはいけないと言ってあるだろ。顔が赤いぞ。何もしていない、もう体が火照ったか?」
肌が、胸が、直接触れてるからでしょ?…、いや、もう!こんな事、しないって、一応言ってたじゃない。
「大丈夫か?」
「はい゙?」
何がです?…裸なんだから…恥ずかしいでしょ。大丈夫じゃないって解ってるでしょうに…。これでも何もしない内なんでしょうか?
「…気持ちはざわつかないか?波立つようなら今日はしない」
…何を甘い声で…推し量っているのよ。波立ってるに決まってるでしょ。答えなくてもそう聞くくらいだから解ってるんでしょ?するしないは全然別問題としても、気遣いはしてくれているって事だ。
「しません!」
「フ。…出会ってからずっと待ったんだ、無理してまでする事ではない」
…安住さん。いつもこうして真面目に話をし始める。
「さっき迄シルバーだったのは、初めて会って約束したのがそのスタイルだったからだ。こだわってみたくなったんだ。店ができて、君と最初にランチをする時はこの髪でいようと思った。今回はウィッグだ。色を抜いたり染めたりは大変だからな」
だから早変わりできたんだ。独特な匂いもしてないし。
「好きですって言った事は本当だよな?あの好きは、俺が好きって意味で言ってくれたんだよな?…真希」
…ドキン。いきなり真希って…。もう、はぁ…本当に狡い。さっき迄髪の毛の話をしていたのにこんな話に変えるなんて…。
「聞いてるよな?ん、心臓が跳ねたぞ。早くなって来た……」
…そう言って、無理してしなくていいと言っている割には、胸の辺りにずっと顔を埋められてますけど…。
…安住さん?……え?もしかして眠ったのかしら?この人には何時と言わず、突然のタイムリミットがあるから…。身体だけが妙に熱すぎて…。オープンする迄もそれからも、ずっと走り続けて…。ずっと頑張って…。ずっとお疲れよね。頭を撫でた。
「撫でるなら違うところを…」
ぇえ゙っ。
「ぅわ、もー、ちょっと……エロ紳士…」
強く手を掴まれた。
「…何が…誰がエロ紳士だ」
うわ、うわ、もう…。どこに持って行くつもり。キャー。駄目駄目。
「頬も撫でてほしいと言おうとしたんだが?」
ぁ……策士。想像させるようにしておいて……これじゃあ私がエロいみたいじゃないですか…はい、…頬ですね…。
「違う…もっと…」
もう片方の手を掴まれた。…え゙ーっ、ど、どこよぉ。今度こそ持っていかれる…。
「どうした?クッ、両手で優しく包むようにだ。クッ、ハハハ、はぁ、面白いな…堪えられない…」
…頬に持って行かれた。…もう…これではいい遊び道具…いいカモだ。
「真希、触れてくれ……唇で…唇、に…」
……え?…黒髪の紳士は私をゾクッとさせた。
「…はい」