勘違いも捨てたもんじゃない

んー、流石に仕事中だからメールは無理なのか。…まあ、気が向いたらでいいとは伝えたし。
ずっと連絡が来ないってのもあるか…。だけど、もし連絡が無くても望みが全く無い訳でもない。タカクラさんが昨日持っていた社名の入った封筒だ。
あれが自社の物か、取引先の物か、会社に在籍を尋ねてみたら解る事だ。何の関連も無い封筒は持ち歩かないものだ。
しかし、そこまですると、多分、いや、確実に敬遠されてしまいそうだが…。
今朝だって時間の無い中だったとはいえ、…反応は微妙だった。…駄目かな、俺…。


「若。若?…浩雅!」

「あ?」

…気、抜きすぎだろ。

「そろそろ会議の時間になります、ご準備を。
それから…、これは、先日のカフェテラスの参考資料です。上手くいけば、店、出せるかも知れません。取り敢えず情報は集めておきました。目を通してみて、役員に打診されてみてはどうですか?
あの辺りで土地さえ何とか出来れば、若の見立て通り、充分いけると思います。マイナスにはならないと思います」

「相変わらず仕事が早いな、…サンキュー」

「機を逃しては、若が残念かと思いましたので」

「…ああ、うん、…そうだな」

あれ?熱はもう冷め始めてしまったのか?
…今日の首尾は上手く運ばなかったって事か?
まあ、こと、女関係に関しては昔から秘密主義だったからな。解らなさすぎて、これでは協力しようにも、どうしようもできないか。
今のところ対象者について解るのは、あの辺りに勤めているだろう、という事くらいか…。

「若、時間です」

「あ…ん、解った」

やっぱり様子が少し違うな。
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