勘違いも捨てたもんじゃない

なんて送っとくかな…。
…ふぅ。

【今朝は本当に不快な思いをさせてしまい、すみませんでした。訳あって乗った電車でお会いしましたが、今後、乗る事は無いと思うので、今日のように偶然お会いする事はまずありません。気をつけてくださいと言っても難しいのですが、本物の痴漢に遭わない事を祈ってますよ。武蔵 】

こんな感じでいいかな。
んー…これだと何だかあまり気がない?二度と会わないようにも取れるな…。俺から名刺を渡したくらいだから、それは無いって、そこは察してくれるかな。んー、まあ、…いいか。誘えるならまた別で。…送っとけ。

ブー、ブー、…。
…あ、…武蔵さんだ。

そうなんだ、電車は普段利用しないのね。そうよね、秘書をしているって事は社長と行動を供にする事が殆どだものね…。あんなことがあったし、初めは緊張したけど、話しやすくて…面白い人だったな。時間があればもっと話したかったくらい。それより何より凄く男前で…格好良かった…。はぁ。私、凄く密着もしてしまったし、ずっと恥ずかしい事ばっかり…。そっか…、もう偶然電車で会う事は期待できないのね…。残念。
連絡先は貰ったんだから、また、私から連絡はしてもいいのよね。取り敢えず…。

ブー、ブー、…。

【また、ご連絡します。お時間がある時に会えたらいいですね】

…ん、…お…ぉお?!…よし。よし、よし。チャンスはまだ、繋がってるって事だな。うん、うん。…あ、これ…社交辞令じゃないよな……。上手く出来すぎてるしな…。



「武蔵」

「はい」

「悪いが車を出してくれ。髪を戻しに行く」

「今日されておくのですか?お早いですね。明日休みですし、スケジュールも空いてますから、明日で宜しいのでは?」

「お前が煩いからだろ?それに明日、無駄に時間を潰したくないからな」

明日、何か用でもできたか…。

「店に連絡は?」

「さっきした。融通の効かない客が居るみたいだ。少し時間がかかりそうだ」

それ…自分だって融通の効かない客の一人なんじゃないのか?先客は先客だ。待って当たり前だろう。お前が急に言ってごり押ししようとしてるんだろ?…全く。

「取り敢えず店に行く。行けば状況が変わるかも知れない。……そうだな、待つ時間を入れて…二時間後くらいに連絡を入れるから、迎えに来てくれ」

二時間で済むのか?店に行って、俺が待ってるんだ的なアピールでもして、前の客に圧をかけるつもりか?
黙ってムスッとしてたら、それだけで威圧的だってのに。

「解りました。では直ぐ車を廻して来ます。下でお待ちください」

「ん」

二時間、空きができる…。
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