勘違いも捨てたもんじゃない
はぁ、私にとっても嵐のような時間だった。胸を押さえた。抑えようとしてもこのドキドキは…なかなか無理。
メールを貰ってからずっとドキドキして。用意ができてからだってじっと部屋で待ってるなんてできなかった。
抱きしめられて…。もう、…キスまでしてしまった。はぁ。…また自然と唇に手が触れてしまう。
こんな出会い方…。電車の中での事も、今夜の事も…衝撃的過ぎる。……何もかも。何もかもよ。こんなドラマのような出会いは二度とないと思う。同じことが電車の中で起きたとしてもその相手が格好いい人とは限らない……普通あり得ない。頬に両手を当てた。……熱い。武蔵さん…いきなり…。はぁ。
…武蔵さん…。私…貴方の会社の社長さんを知っているの。ただ知っているだけじゃなく、思い違いじゃなければ、多分好意を持たれていると思うの。貴方がくれたように、名刺、連絡先を渡されたから。…武蔵さんと同じようにです。
だから、社長さんももしかしたら…だと思うの。
…。
とにかく、武蔵さんに、社長さんに出会った時の事から解るようにメールしておこう。
その上で…私が武蔵さんを好きになったと言ったら…、武蔵さんはどうするのだろう。
…社長の手前、…無かった事にしてしまうのだろうか。じゃあ、私が社長を知っていると言わなかったら?…これから続けられる?
私には解らない。
人を好きになるのに、立場は関係するのだろうか。それで駄目になるなら、私は知っていると言わない。武蔵さんが社長の為に身を引くような事をするなら、私だって…。他の人にはいかない。
…あ、私。
武蔵さん、急に衝動的になったって言ったけどそれを変だとは言えない。私だって、もうこんなに惹かれている。いきなりで驚いたけど、抱きしめられたって、ちっとも嫌なんかじゃなかった。キスだって、突然だったけど…。どこか期待していたのかも知れない。だって、もっと一緒に居たかった。……本当に短い時間だったから。だから余計昂っているのかも……。
また唇に手を触れた。
数十分も一緒に居られただろうか…。もっと短かったかも知れない。こんな事…、あまりにも目まぐるしくて。ドキドキが収まらない。
はぁ。ずっと抱きしめてくれた事が嬉しかった…恥ずかしさもあったけど。今もずっと胸は高鳴っているまま…。あんなに正直に気持ちを言ってくれるなんて。……はぁ。