勘違いも捨てたもんじゃない

「真希…真希…」

「…は、い」

「もう朝だ。ごめん、戻るよ」

「…はい」

「今日、スケジュールは入って無いんだけど、日中は直ぐ動けるように近くに居ないといけないから、ごめんな、何の約束もできないで」

「…う、ん」

「フ、起きてるか?返事だけ適当にしてるんじゃないのか?」

「…う、ん」

…夢うつつです。

「罰だ…」

布団を少し捲られた。………ん、…、ぁ、……。

「や、…武蔵さん…」

慌てて胸を隠そうと捲れた布団を掻き集めた。

「……適当に返事してるからだ。…ご馳走様…」

「…ん゙ー……」

甘えた声、出していた。

「…フ。そんな顔して…これでも、戻るのって寂しいんだからな?」

指が髪をすいた。…寂しいって言葉、聞いてしまうと余計拗ねたくなる。

「……もう帰るの?」

「ああ…さっき言った」

「今日、仕事なの?」

「…それも、さっき言った」

「ご飯は?」

「フ、それは…ちょっとだけ食べただろ、今」

「あ…もう、真面目な話です!」

食べたなんて…そうじゃなくても恥ずかしいのに…不意もつかれて…尚更恥ずかしい。

「ハハ、朝ご飯は、帰ってから社長と一緒にだ…」

…そうなんだ。それもお世話、秘書の仕事なの?…。それともそんなときは幼なじみとしてなの?

「真希、もう、真希って呼んでいいかな…」

また髪をすかれ、頬に手が触れた。

「…はい」

この手、ずっともっと触れて欲しい。

「俺も、なるべく猛がいいな。まあ、武蔵でもどっちでもいいけど。真希、誕生日はいつなんだ?まさか、もう過ぎてるとか?」

それは辛うじてまだ。

「武蔵さんは?」

「俺か?俺が聞いてる方だろ?ああ、もう…時間が無い。誕生日、好きな物、あと、色々、メールしてくれ。じゃあな…」

あ、…。おでこに口づけながら頭をクシャクシャされた。……ん?見てる?抱きしめられた。

「そんな顔は止めろ…、離れがたい」

あ。んん、ん…。こんな…深い口づけ…。

「…こっちも頂いた。今度こそ行ってくる」

「ん、…じゃあ、ね…」

「…ん、ああ。もう大丈夫だな」

あ、武蔵さん。…。…はぁ、…もぅ。深く触れた……唇、甘い余韻に身体が疼いた、…ドキドキした。
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