勘違いも捨てたもんじゃない
よく見れば、凄く若いと言う事でも無かった。
プルプルの尻が好みって訳ではなかったんだな。おっと、それは個人差があること…失礼か、…。だけど、何だろう…雰囲気のいい女性だった。何となく香る匂いは、場所的にシャンプーの香りか…。香水の強い嫌な香りとは違った。
明日も同じ時間同じ車両に乗ってみるか…。
また懲りもせず、痴漢するかも知れないあのオヤジに出くわさないとも限らない。
あんなくそ野郎は、その場逃れの態度を取りがちだ。本当に一度痛い目に遭わなければ懲りないタイプだ。だから卑怯な痴漢なんだが。
あぁ、俺、髪の毛、シルバーにしてたんだった。黒のスリーピースにこの髪じゃ…異様に恐かったかも知れないな。だから転げるように降りて行ったんだな、きっと。……違うんだけどな。俺は恐い人じゃないんだけど…。
これはまあ面白半分…パッと見、俺だって解らないようにする為にしたものなんだ。明日もまだこの髪色…。
あの女性にだって、近くに立って居たら、見た目で恐がられるかも知れない。まあ、乗ってみるさ。端から探して行けば、車両が違っても、降りる迄には見つけられるだろう。混雑の中、甘いか…。同じ時間に同じ車両に乗らなければ会えないが。
俺自身、人に興味を持ったのは久しぶりな気がする。人というか、厳密には女性の事なんだが。それだけ、なんとなくの、雰囲気だけの印象なのに、気になった女性だった。どこの誰だか解らない俺に、勝手に守られようとしてるなんて…知れば、気持ち悪い、恐い話だな…。