勘違いも捨てたもんじゃない
「真希…起きてるか?」
「…は、い」
…。
「起きてるか?」
「…は、…い」
「ちょっとあったって言ってただろ?会社関係なのか?…もう大丈夫なのか?」
…。
「お〜い」
…。
駄目か、寝てるか。ふぅ。大丈夫ならいいけど、このくらいになって、ちょっとあったって落ち込むのは、割としんどい事なんじゃないのかな…。昔、ん゙ー、もっと若い頃ならな、毎日愚痴りたくなる事も色々あるもんだけど。毎日そればっかりで話をしてるようなもんだ。ベテランちゃ、もうベテランなんだし。我慢の仕方も知ってる…。だからよほどのことだ…。女子社員の中でなんかあったとか…。よく解らないけど。
「…よしよし…」
寄り添うように寝ている真希の頭を撫でながら抱き寄せた。辛い事、あったら俺に言ってくれよな。まあなぁ、俺もそうだけど、ずっと一人で居ると、自分の中だけで解決しようとするもんだけど。一人で大丈夫、なんて、無いからな?…凛として強そうにしてるけど、…抱えてるものはあるよな。現に辛い目に遭ってずっと我慢してた訳だし。はぁ。…よしよし。今度は俺にもしてくれよ?
ん…ん、あ、いけない。朝?
あ、武蔵さん、居ない…はぁ、……ごめんなさい。全然気がつかなかった…。メモがあった。
『先に出る。寝てるから起こさなかった。鍵は気にしないでいいから、出たら閉まる。忘れ物、するなよ?入れないぞ?』
はぁ、ぐっすり寝ちゃった。……帰らないと。
まだ…時間は大丈夫ね。…はぁ…駄目ね。もっと話したかったのに。結局こんなことに…。いつも会ってるならこんな感じでも気にならないんだろうけど。…とにかく、忘れ物はしないように出ないとね。冗談ではなく…寝言、言ってなかっただろうか、呟いたりしてないよね……噛まれて無いよね。