勘違いも捨てたもんじゃない
【考えていてくれていたという事は、少しは私の事が気になっているのだと、前向きに捉えていいのかな?少し話をしないか?】
話をしないかって…、はいも、いいえも、メールをもらってからかなり時間も経ってるし。…もう夜だし。敢えて早く見なかった事は私が悪いのですけど。
【考えていたのは、出会った時からの安住さんの行動です】
…何、言ってるんだろう、余計な事、言わなくていいのに。
【それで?何を思ったのかな?】
あ、嘘、直ぐ返って来た。
【ちゃんとしているなって】
…大人の人にちゃんとしてるって。失礼極まりない。他に言い方がありそうなものなんだけど…。
【それで?今から話せるのかな?】
【これでだって話せますけど?】
【では、やめよう】
…何ですか?…もう。前向きな話とか、そんな話は…。
【途中、先にちょっと有りましたけど…、それを除けば、安住さんは、会ってお話をして、ご飯をして、送ってくれて、みたいに、順を守っているのかなって。そんな紳士なところをちょっと考えていただけです】
勝手に話してますけどね、メールで、ですが。寒いと上着を掛けてくれるし、缶珈琲だって開けてくれるし、エスコートもしてくれるし。全てがさりげなくです。そんな事を色々、思いつくまま考えていたのです。
そもそもそれって、もの凄くいい大人なんだから、出来て当たり前なのかな。そして、絶対…策士。これは狡い大人の部分よね。
【今、かなり私の事を考えている最中かな?】
…ほら、こんなところ。でも何故解るの?
【いいえ】
【子供だな。敢えて返してくるいいえは、はいと言っているようなものだ】
も゙う…だって、迂闊にそうですね、とは言えないでしょ?はい、なら、更に攻めてくるでしょ?
どっちにしても、上手く術中にはまってしまうのだから。
【ご飯は食べたかな?】
…その手には…。どんなに思案して言葉を返しても、安住さんの思うようにことは運ばれてしまうんだもの。
【外出禁止です】
ピンポン。
…え゙、…。安住さん?出ない出ない。しまった…、外出禁止なんて言ったら外出しなければいいだろってなるんだった。部屋に居ればいいんだなって。…もう。私、馬鹿。
ピンポン。
開けてくれないと人に迷惑がかかるんだとか、また言うのかな…。
ピンポン。
…出ませんから。何度鳴らしても出ませんからね。