ふたりで
再会*****
彼を見かけたのは、大学のカフェテリアだった。
笑い声に引かれて、その方向に顔を向けると、笑った彼の顔。メガネの奥で細められた優しい眼差しに、一瞬懐かしさのようなものを感じ、見つめてしまった。
彼も、私に気づいたような気がしたが、アクションは、何もなかった。
「真愛(まな)、知ってる人?」
と、親友の幸(さち)が聞いてきた。
「ん?知らない、たぶん」
私は、彼から目を離せずに答えていた。
ちょっぴり不思議な時間だった。
私(橋本真愛)は、念願のT大に合格し、大学の入学式が終わり、教育学部の授業の時間割りを組みながら、わくわくした毎日を過ごしていた。
地元の大学だから、同じ高校の友達が沢山いるけど、法学部で親友の金井幸(かないさち)とは、学部もサークルも違うので、なかなか一緒にいられない。だからお昼は、出来るだけ一緒に食べる約束になっていた。
「何たべよう?」と、幸が、食券売り場を前に考えている。私はというと、割りと即決の人なので迷わず、
「私は、サンドイッチとコーヒーにする。」
いつも私に合わせる幸が、今日も、
「じゃ、私もそうする。」
と、すぐに決めた。
食券を買い、トレイにランチを乗せ席につく。すると、幸が、
「さっきの彼、ちらちらとこっちを見ているよ。」
「えっ!」
と、驚いて彼の方をみると、目があった。
でも、向こうは、すぐに目をそらしてしまう。
「真愛のこと、気になってるのかな?」
と、幸が言うが、
「幸かもしれないでしょ。」
と、私が言うと、
「それは、ないよ。だって、私と目が合わないもの。真愛は、目が合ってんじゃないの?」
実は私もずっと、彼の顔が、頭に浮かんで、気になっていたのだ。どこかで、会ったことあったかなと。