ふたりで

6月に入り、幸がそろそろこーちゃんを紹介してと、せっついてきた。
こーちゃんに親友と会わせたいと言うと、
「願ったり、かなったりだ。」
と、訳のわからない答えが返ってきた。
私は、余り深読みはせずに、ふたりを会わせることにしたが、こーちゃんにとっては、彼氏へ一歩近づいたと、内心でほくそ笑んでいたらしい。これは、ずっと後から、こーちゃんが教えてくれた。


こーちゃんは、学業が疎かになるから、バイトは、夏休みなどの長期間の休みにするそうで、会う日は、幸のサークルの休みに合わせてくれた。私は、週に2日だけ、学習塾のバイトをしていた。私も夏休みには、前半の2週間と後半2週間は、毎日夏期講習のバイトが入っている。
こーちゃんは、理学部だから、勉強も半端なく大変らしい。理系は、どこもそうだ。
私の教育学部や幸の経済学部などは、真面目に授業に出ていれば、さほど忙しくはない。ただ文系の就職活動は、大変だろうけど。


幸と私の都合で、日曜日のランチに会うことにした。
知らない顔じゃあないから、三人で、ファミレスに待ち合わせをした。
幸と私が先に着いていた。そこに、背の高い二人の男性がやってきた。
「真愛、悪い! 啓太がどうしても正式に紹介しろと、ついてきてしまったんだ。真愛の親友と会うなら、自分も親友として紹介してほしいらしい。」
と、こーちゃんが誤ってきた。

「いゃー、申し訳ない。ほら、幸大、早く紹介しろよ。」
啓太君が、こーちゃんをせかすように言った。
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