ふたりで

「津山、たとえ時間があっても、瀬川と出かけることはできない! この間、津山も会ったろ、俺の幼なじみ。俺、あいつと付き合ってるから。」

「うそ!」

津山は、言葉をなくし、瀬川は肩を落として、下を向いてしまった。

これで、このふたりから、煩わされることも、ないだろう。

突然、瀬川が泣き出した。俺と啓太は、どうしたものかと、お互い困惑ぎみの表情をした。

「啓太、啓太は知ってたの?」
と、津山は啓太を責め始めた。

「だから俺は、お節介は止めておけと、言ったろう。」
と啓太は、返す。

「啓太も、芝宮も、ひどいよ。奈津美の気持ちを知ってたくせに。ひどいよ。」
と津山は訴えてきた。

「津山、瀬川、俺は、前にはっきりと、付き合うつもりはないと、言ったよな。」
今度は、俺が卒業前のことを切り出した。

「そうだったかもしれないけど、それって大学が違っちゃうから、続かないかもってことでしょ。」
と津山が勘違いなことを言ってくる。

「違うよ。俺にそういう気持ちがないってことだよ。」
俺は、瀬川には悪いと思ったが、自分の気持ちをはっきりと、言葉にした。

それを聞いた瀬川は、再び泣き出した。
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