ふたりで
私は、白い壁の側に座っていた。
いつからそうしているのかわからないが、
『いつまでもそこにいてはだめだ』
と言う、言葉ではない何かに突き動かされ、私は、ようやく立ち上がった。
壁に沿ってしばらく歩いたが、何処までも壁は続いていて、果てがないようだった。
ずっと歩いているのに、私は、全然疲れない。
一体全体、私はここで何をしないるのだろう。
ふと、私は気づく。
私は、何かを見つけたのに、それを無くしてしまったことに。
何か、たぶん、大切な物だ。
私は、のんびりしていては、いけないような衝動にかられ、焦り出した。
私は、走る。息が苦しいのに、立ち止まっては駄目なのだ。
私は、走る。何かを見つけなければ、私は、きっと生きていけない。
急に、手を掴まれ、引っ張られる。
目をあけると、こーちゃんが、私の手を握っていた。
振り払いたいのに、力が入らず、
「離して、手を離して!」
と溢れてくる涙とともに、責めるように言いはなった。