夕星の下、僕らは嘘をつく
コートのポケットに入れていたスマートフォンが震えて立ち止まる。
叔母からかと思って画面を見ると、莉亜からのメッセージだった。
『なんで友哉と別れちゃったの?』
見たくもない、メッセージ。
だけど無視したらしたでまた延々と入れられるし、つきあい悪いねって他の子たちに愚痴られる。
引きこもった時点でつきあいも何も、って感じだけど。
きっと私抜きのグループとか作ってるだろう、莉亜たちは。
『すれ違い』
とはいえ、私がまだ学校と、クラスと、友人と繋がりを持てていられるのは莉亜のおかげだろう。
本当はそれが嬉しいのかどうかわからないけれど、それでも、高校生の私にとってそれらは絶対に等しいものだから。
きっと莉亜がいなければ今頃私は終わってたと思う。人生終了。生ける屍。
それだけ返信して、ポケットにしまう。
たぶん次のメッセージが来るだろうけれど、しばらく無視をしよう。
第一、友哉の名前なんて、見たくない。
雪はしばらくやみそうにない。
たくさんの人が通るせいか道に積もりはしていないけれど、降り続けたら屋根や木は白くなりそうだ。
叔母が迎えに来ると言っていたものの、まだ連絡はこない。
到着予定時間は伝えておいたし、それに対しての返信はあったから、待っていればいいだろう。
そう思ったところで、雪がだいぶと降っているのが現実。
人が少ないところ、と探して歩いてみたものの、そんなところ見つかりそうにもなかった。
かといってどこか店に入る気もない。
しかたなしに、屋根があってちょっと立ち止まれるスペースで待つことにした。
壁際にいれば、人が見える範囲も限られる。寒いけれど、すこしぐらい我慢するしかない。
手袋もしてくれば良かった、と後悔する。
もっとも、私の手にあう女性用手袋なんて滅多にないんだけれど。
女に生まれて身体の末端がでかいなんて、ただの不幸だ。
ちょうど目の前に条件に合いそうな場所を見つけた。
ただの壁だから、前に立ったところで迷惑にもならない。
今なら人もいないし、ちょうどいいだろう。そう思って足早に向かった。
「あ……す、すみません」
ところが、同じことを考えた人が私以外にもいた。
「いや、こちらこそ……って、あれ」
目的地の壁を目の前にして、その人物と向き合うことになる。
「さっきぶり」
私より頭ひとつぶん大きい、少年。
「え、あ、えっと、さっきはすみません」
ほんわかと微笑まれたけれど、それに対する返しのパターンは私の中に存在しなかった。
そもそも、ついさっきぶつかった相手に再会するとは思ってもいない。
叔母からかと思って画面を見ると、莉亜からのメッセージだった。
『なんで友哉と別れちゃったの?』
見たくもない、メッセージ。
だけど無視したらしたでまた延々と入れられるし、つきあい悪いねって他の子たちに愚痴られる。
引きこもった時点でつきあいも何も、って感じだけど。
きっと私抜きのグループとか作ってるだろう、莉亜たちは。
『すれ違い』
とはいえ、私がまだ学校と、クラスと、友人と繋がりを持てていられるのは莉亜のおかげだろう。
本当はそれが嬉しいのかどうかわからないけれど、それでも、高校生の私にとってそれらは絶対に等しいものだから。
きっと莉亜がいなければ今頃私は終わってたと思う。人生終了。生ける屍。
それだけ返信して、ポケットにしまう。
たぶん次のメッセージが来るだろうけれど、しばらく無視をしよう。
第一、友哉の名前なんて、見たくない。
雪はしばらくやみそうにない。
たくさんの人が通るせいか道に積もりはしていないけれど、降り続けたら屋根や木は白くなりそうだ。
叔母が迎えに来ると言っていたものの、まだ連絡はこない。
到着予定時間は伝えておいたし、それに対しての返信はあったから、待っていればいいだろう。
そう思ったところで、雪がだいぶと降っているのが現実。
人が少ないところ、と探して歩いてみたものの、そんなところ見つかりそうにもなかった。
かといってどこか店に入る気もない。
しかたなしに、屋根があってちょっと立ち止まれるスペースで待つことにした。
壁際にいれば、人が見える範囲も限られる。寒いけれど、すこしぐらい我慢するしかない。
手袋もしてくれば良かった、と後悔する。
もっとも、私の手にあう女性用手袋なんて滅多にないんだけれど。
女に生まれて身体の末端がでかいなんて、ただの不幸だ。
ちょうど目の前に条件に合いそうな場所を見つけた。
ただの壁だから、前に立ったところで迷惑にもならない。
今なら人もいないし、ちょうどいいだろう。そう思って足早に向かった。
「あ……す、すみません」
ところが、同じことを考えた人が私以外にもいた。
「いや、こちらこそ……って、あれ」
目的地の壁を目の前にして、その人物と向き合うことになる。
「さっきぶり」
私より頭ひとつぶん大きい、少年。
「え、あ、えっと、さっきはすみません」
ほんわかと微笑まれたけれど、それに対する返しのパターンは私の中に存在しなかった。
そもそも、ついさっきぶつかった相手に再会するとは思ってもいない。