ただ、貴方に逢いたい
運ばれていってからどれだけの時間が経ったんだろうか?
慌ただしく出入りするお医者さんや看護士の人達。更に不安が募っていく。見ているだけしか出来ないことがもどかしくて…。

「海音くん…。なんでこんなに慌ただしくなってるの?」

ギュッとお母さんの私を抱き締める手に力が籠る。それすら不安で私もすがるようにお母さんに寄り添う。

「大丈夫だよね?海音くんはずっと一緒にいようねって言ってくれたもん…。大丈夫だよね??」

私の言葉におばさんはおじさんに寄り掛かる。そっと抱き締めあう姿が余りに痛くて…涙が伝う。


静かに処置室の扉が開いてお医者さんが出てきた。俯いているからその表情からは海音くんが無事かわからない。

「出来る限りの力を尽くしたのですが、息子さんは…」

顔を上げて私たちに告げた言葉に絶望した。
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