プラネタリウム

消えない光

私は初めて男の子を部屋に入れた。

そう…大翔。

殺風景な私の部屋。

大翔はプラネタリウムの機械を見て、「見たい」と言うので一緒に眺めてた。

何するわけでもなく…床に二人で横になって。

「意外にキレイだな」

意外にキレイでしょ?

「落ち着くよね…」と私。

私達は本当に健全な付き合い。

手を繋ぐくらいで他の事はしてない。

それが不安になる時もあるけど、そういう事をしなくても満たされている。

不思議だね。

私の事本当に好き?って聞かなくてもわかる…。

伝わってくるから。

言葉で…行動で。

逆にちゃんと伝わってるかな…私の気持ち。

そう思うことの方が多い。

別の学校に通う二人。

だから聞く話しも新鮮だ。

尽きない会話。

だけど聞いてしまった。
大翔はモテモテだよーってりこから。

意地悪なりこ。

大翔がモテるのわかる気がするって普通に答えた。

顔も私は好きだけど、性格がモテる理由な気がする。

はっきりものを言うところも…さりげない優しさも…人の中にさっと入ってくるタイミングも。

女の子は好きだと思う。

私は大翔に会えてよかった。
本当によかった。


時々聞く「親父マジでウザイ」とか相変わらず仲は良くないみたい。
でもケンカできる関係だから悪くもない。

私がお邪魔した時は本当に若いお母さんでモデルさんみたいにスタイルがいい人。
自分の母と比べるとお母さんというよりお姉さんみたいだった…。

お母さん…比べてごめん。

大翔のお父さんもいた。
特に会話を、交わさない二人。

大翔の部屋は香水がキレイに並べてあったり、ピアスがケースにキレイに入ってたり私より女子力高い。

だけど落ち着く。

私ね…私…テレビ見てるうちに寝てしまっていた。

布団がかけられてる。

大翔はテレビ見ていた。

私は何をしに来たんだろう。

起きたことに気付いた大翔は「おはよう」って笑った。

「いびきかいてたよ」って。

私…いびきかくの?
恥ずかしいのなんの。「ごめんなさい」これ以上ない。

「嘘だって」って笑う大翔は楽しそう。

疲れてると思ったから起こさなかったんだって。
暇じゃなかったかな?

「ちょっとでかけない?」と言われて外に出た。

家から少し行った場所にかわいい雑貨屋さんがあった。
かわいいものから面白いものまで色々ある。

歩きまわっていたらペアリングが並んだガラスケースを見つけた。
かわいい…。
いつかお揃いできたらいいなぁって思いながら見てた。

夢は無限‼

あれこれ言うとキリがない‼

「一緒に買う?」と大翔。
これカッコイイ…って。

私が見ていたのと一緒。

大翔に似合いそうだと見ていたリング。

値段を確認して、お互い手が出せる値段だったから買いあっこした。

初めての「おそろい」しかもペアリング。

お互いに指にはめあって、結婚式みたいだねってテレ笑いしたくらいにして…。

彼氏とおそろい何て私は初めて。
大翔は?とは聞かない。

大翔は色んな景色を私に見せてくれる。

その景色は今まで見た事がない場所へ次から次へと連れていってくれた。


学校に行ってすぐにりこが気付いた。
ペアリング…さすがりこ。早い。

「私もゆうとしたぁーい」と言っていた。

りこは「手繋ぎデート卒業したの?」と聞いてきた。

「変わらず手繋ぎデートです…」と私。

「ぎゅーってした事もないの?」とりこ。

「………ないよ」と私。

ぎゅーとかちゅーなんて小さい子でもするよって。

確かに…もしかして私に気を使ってる?
そんな事しなくても私は満足。
でも本当のところ大翔はどうなんだろう。
まだ未練ありそうに見えるのかな?
私が自分で気付いてないだけで、そういう事にならないようにしてるのかな…。

何かりこと話していたら、変に不安になってきた。

聞いてみようかな…?
でも何て聞く?恥ずかしいし…そうしてと言っているみた
いで聞けない。

大翔と話すたび、会うたびに聞こうとする。
だけど…無理。
あと一歩。
いや…あと二歩。

なんだけどなぁ…。


大翔は当たり前のように差し出す手。

手をのばす私。

その瞬間がたまらなく好き。

会った時のドキドキも変わらないよ。



私はバイトを休んだ。
明日から修学旅行に大翔が行くから。

別にもう会えなくなる訳じゃないけど、連絡とれなくなってしまうから会いたかった。

学校が終わってバスに乗り込んだ。


バスから降りると大翔の姿。

下を向いていた。

イヤホンをつけて音楽を聞いている。

何の曲を聞いているかは何となく想像できた。

そんな大翔は私に気付いていない。

驚かせようと思って視界に入らないように歩いた…

その時…大翔と同じ制服を着た女の子が大翔の方に向かって歩いてくる。

友達?


私より一足早く大翔の所についた女の子は、大翔の手を掴んだ。

状況が読めない。

大翔もびっくりしていた…耳のイヤホンを外す。

「何?」と大翔。

「私ね、やっぱり大翔が好きなの…」

大翔が答えようとした時…

一チュッ一

状況が読めない…二人との距離が遠く感じた。


大翔はその子の肩をつかんで二人は離れた。

「俺、彼女いるから無理」


大翔…ちゃんと私の存在言ってくれた…。泣きそう…。


「…他校の子でしょ?私とだったらいつも一緒にいられるよ…大翔が辛いときも…私じゃダメなの?」

確かに…大翔が辛いとき私はそこに居ない。

でも大翔は渡さない‼絶対…。

大翔が何か言おうとしたけど、私が大翔の横に立った。

大翔もその子もフリーズしていた…。

「私ね…大翔が大好きなの。あなたが言うように大翔が辛いとき一緒に居られない時もあるよ。もしかしたら、気付けていない時もあると思う…。だけど…だけどね…大翔を想う気持ちは誰にも負けないから‼」

私…言えた…。手が…足が震えてる。
心臓も忙しく動いてる。

だけど…言えた。

私ね…その子と重ねた唇が嫌‼
だから私は背が高い大翔の腕をつかんで、思いっきり背伸びして…キスをした。

大翔とした初めてのキス…。

その子は「大翔の答えが聞きたい」と…。

私も緊張する…。
さっきはそう答えていても、次はわからない…。

一ドキドキ一


「ごめん。俺はあかねが好きだから。さくらとは付き合えない」

「わかった…私未練がましいね。いつまでも忘れられない…でも、いつか大翔よりイケメン見つけるね」って…。

泣いてた。

その顔はどこか吹っ切れたようにも見えた。

大翔は「楽しみにしてる」と笑った。

普通に言われたら傷付く。だけど大翔がいうと憎めない。

さくらという子は「彼女さん、ごめんね」と言って走っていった。


二人きり。
お互い話しのきっかけを見付けられずにいた。

とりあえず歩こう?と無言で伝えて、歩き出そうとしたどき…

一ふわっ一

私は大翔の腕の中にいた。

「あったかい…大翔いい香りするね…」

何にも返事がない。

「大翔?」

離してくれない。

「どうしたの?」

「今は…俺の顔見ないで…」と大翔。

見るなと言われると見たい。
人はみんなそうでしょ?

私は大翔の顔が見たくて上を向いた…あっ…目があった。

顔赤い…私が見たことない大翔の顔。

いつも冷静だから…こんな顔するんだね。

「かわいいよ…大翔」

「うるせーよ」と大翔。

「大翔は私にキスしてくれないの?」

とうとう言ってしまった…。

近づいてくる顔…私は目を閉じた。


私達が今にいたるまで、普通の人より時間がかかった。
それは、付き合ってすぐそういう事をしたら私に軽い人と思われそうだから…が答え。

そう思っている内に1年が経過していた。

ある意味すごいよ…私達。

初めて聞いた大翔の気持ち。

さっき私がさくらという子に自分の気持ちを伝えたとき…

大翔は心のどこかでまだ私が北斗を想っているのかもと思っていたらしい。

私が無理をして付き合ってるとかではなく…。

結局、私達は過去の話をしたのは一回だけ。

お互い聞かないし、話さなかった。

私は北斗の事、吹っ切れたから大翔と付き合った。

好きな気持ちももちろんあったから。

だけど、大翔と初めて会ったのは私が失恋した時。

その姿を大翔は見てたから不安に思う所もあったんだね…

私は大翔が失恋したのを見てないから…そういう不安はなかったし、大翔は私を不安にさせないようにしてくれてた事に今さら気付いた。

今日は全部伝えよう‼
一緒にいられる今だから。彼女だから。

「私は大翔が大好きだよ。絶対に失いたくない。だけど大翔の気持ちに気付けなくてごめんね…。私、大翔と付き合った時点で元カレへの気持ちはないから。」

「………うん」

「大翔に甘えすぎてたかな?私は大翔だけ…他の誰かなんて考えられない」

私、強くなったよね…?

人に気持ち、ちゃんと伝えられるようになったよね…?

私、少しは成長できたよね…?

「俺も同じ気持ちだから…不安に思わなくていいよ」って

私ね…いつも大翔のペースになっちゃうんだ。

小さな事でケンカしてもいつも大翔が「ごめん」って先に言ってくれた。

私が悪くても…。

りこが言ってたみたいに好きだと許せるんだよ…どんな事も。

だけどそれは相手が大翔だから…。
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