豊中まわり
何も手につかないまま、部活が終わった。

いつもは家から近いこともあって、ジャージのまま帰っていた。

今日はそういうわけにはいかない。

制服に着替えて、髪をくくり直していると、

いつもと違う行動の私に友達が気づいた。

「結莉~。今日今からなんかあんの?
もしかして誰かと会うんじゃないの~?」

鋭い。

「うん…。ちょっと昨日色々あって…」

言いかけてやめた。

彼氏ができたと自慢気に言ってもいいものか。

今から来る氷上を「彼氏です」と紹介できるほど、

私達の関係はまだしっかりしたものではない。

本当につきあっているのか、私だって半信半疑だ。

追求の厳しい友達になんとか誤魔化して、先に帰ってもらった。

フォンと待っていた音がなった。

ー着いた。パン屋の前のベンチ。ー

トイレで前髪を確認して、校門に走った。

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