豊中まわり

兆し

すこし長めの春休み。

俺は暇があればスマホを見ていた。

もちろん深瀬からの連絡を待っていた。


深瀬が携帯を持っていないことは知っていた。

深瀬の連絡先をしつこく聞いていたクラスメイトが、携帯をもってないからと言って断られたことを、大声で話ていたから。

しかし、本当のところは何もわからない。

本当は持っているけど、

面倒なやつをかわしただけかもしれない。

3年以上まともに喋っていない俺に、

今更連絡がくるだろうか。

俺のことも、かわしてしまうのだろうか。

俺のことなんてもう思い出したくもないのかな。

日がたつにつれ、不安が募った。

もう諦めかけていた3月下旬、

サッカーの練習が終わり

スマホを見ると、ピカピカ光っている。

開くと

ー久し振り。高校入学祝にスマホ買ってもらいました。高校は違うけどお互い頑張ろうね。
090ーxxxxーxxxx 深瀬結莉ー

スマホを持つ手が震えた。

深瀬だ深瀬だ深瀬だーーー

俺はしばらく動けなかった。

つながった。

まだつながっている。

すぐ返信しようと思った。

なんなら、すぐ電話をかけて、声が聞きたかった。

勢いで電話すれば良かったのかもしれない。

でも文を読めば読むほど、決別の言葉のように思えた。

高校で新しい出会いを楽しみにしてるのかもしれない。

深瀬の中学生活は、俺がぶち壊したようなもんだ。

返信を書いては消して、書いては消して。

ようやく送れた文はヘタレなものだった。

ー登録完了。何か困ったことがあったら連絡して。ー

深瀬からの返信はなかった。

やっぱり俺のことは忘れたいんだな。

体が重く感じた。


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