豊中まわり
周防修治
成績上位者
「しゅう君。この前のテスト、また載ってるわよ。
本当にしゅう君は賢くてママうれしいわ。
今度は10位以内目指して頑張ってね!」
ママが塾から送られてきた公開テストの成績上位者表を見ながら、小学校から帰って来た僕を玄関で出迎えた。
あぁ。この前のやつか…
5年になって初めてのテストだった。
トップ10に入らなかったのか。
けっこう出来たと思っていたのに。
重いランドセルをおろして、机の上の表を見た。
だいたい知ってる名前が上位を独占している。
小学3年からこの塾にいるので、上位の名前はだいたい把握している。
しかし、1つ見慣れない名前があった。
僕の1つ上。
10位 深瀬結莉
気になったのは僕より上の順位だからだけではない。
僕と同じ教室だったからだ。
こんなやついたっけ?
該当するやつが思い付かない。
5年になって何人か増えたから、きっとその中の誰かだろう。
でも、いきなり10位って…
このテストは塾内のテストではあるが、20人くらいのクラステストではない。
関西圏にある教室全部の順位だ。
今までの僕の通ってる教室でランクインしているのは、全学年でも僕くらいだった。
だから同じ教室に現れた〝深瀬結莉〟に興味が湧いた。
今日の塾で席順の名前を確認してみよう。
どんなやつか気になった。
名前から推測して、女子。
私立男子校を受験する僕のライバルではないが、身近に現れた10位を確認したい。
もちろん僕は中学受験組。
親が開業医なので、医者になるのが僕に決められた道だった。
受験する中学も その先の大学まで、パパと同じところに行かなければならない。
小さいころから習い事をたくさんやらされた。
パパが休みの日曜日以外は毎日何かに通っていた。
英語、ピアノ、塾、科学教室…
流石に5年になって塾が週4になったので、英会話教室以外は辞めさせてもらえた。
ママ曰く、僕はパパに似て、頭がいいから人付き合いなんてしなくてもいいらしい。
中学に入ったら、〝会話が弾むお友達〟ができるらしい。
だから小学校の友人が少なくても気にするな。
ということだろう。
実際、僕も他人と話すのは苦手だ。
友達もほとんどいない。
放課後遊ぶ時間なんてないし。
同級生は、要領を得ない話し方だし、僕が理論的に話してやると、早口で何を言ってるのかわからない とかふざけたことを言う。
僕の会話のレベルについてこられないだけじゃないのか。
女子にいたっては低レベルな会話が多くて、話す気にもならない。
人の悪口ばっかり言ってるやつとか、大声で人の小さなミスを批判するやつとか。
あと、最もよくわからないのが〝恋バナ〟の類いだ。
だいたいクラスでモテるやつは決まってる。
野球、サッカー、バスケ系男子。
市の小さな大会でも優勝すれば、女子の目はハートに輝く。それを助長するように朝の全校朝会で表彰される。
全国模試でトップ100に入っても学校では表彰されない。
学校は勉強する場所のはずなのにどうしてだ。
数人の人気者がほとんどの女子のターゲットになる。
その争いは、学年が上がるにつれ熾烈になる。
一番馬鹿らしいのは、女子のヒエラルキーだ。
だいたいヒエラルキーのトップに君臨するのは性格極悪な女子。
ズル賢くて、裏表があって、一人じゃ行動できないふりして、仲間にしない女子を追い出す。
モテるやつは、こういう女子の表面しか見せられないから、きっとわからないだろう。
僕はそういう女子の裏面しか見てこなかったので、よくわかるんだ。
席替えの時、僕の隣になっただけで、小声で
「さいあく」
と囁かれたり。
グループ研究で発表があれば、
「周防頭いいから全部やっといてー。
私達バカだからついてけないしー。」
といって、まわりを巻き込み人を傷付けるやつもいた。
全員がそうではないこともわかっている。
しかし、ヒエラルキートップは
他に有無を言わせぬ圧力がある。
優しい女子は従うしかない。
それは全てにおいてそうだった。
男子校も、この煩わしい女子がいないなら天国のように思えた。
本当にしゅう君は賢くてママうれしいわ。
今度は10位以内目指して頑張ってね!」
ママが塾から送られてきた公開テストの成績上位者表を見ながら、小学校から帰って来た僕を玄関で出迎えた。
あぁ。この前のやつか…
5年になって初めてのテストだった。
トップ10に入らなかったのか。
けっこう出来たと思っていたのに。
重いランドセルをおろして、机の上の表を見た。
だいたい知ってる名前が上位を独占している。
小学3年からこの塾にいるので、上位の名前はだいたい把握している。
しかし、1つ見慣れない名前があった。
僕の1つ上。
10位 深瀬結莉
気になったのは僕より上の順位だからだけではない。
僕と同じ教室だったからだ。
こんなやついたっけ?
該当するやつが思い付かない。
5年になって何人か増えたから、きっとその中の誰かだろう。
でも、いきなり10位って…
このテストは塾内のテストではあるが、20人くらいのクラステストではない。
関西圏にある教室全部の順位だ。
今までの僕の通ってる教室でランクインしているのは、全学年でも僕くらいだった。
だから同じ教室に現れた〝深瀬結莉〟に興味が湧いた。
今日の塾で席順の名前を確認してみよう。
どんなやつか気になった。
名前から推測して、女子。
私立男子校を受験する僕のライバルではないが、身近に現れた10位を確認したい。
もちろん僕は中学受験組。
親が開業医なので、医者になるのが僕に決められた道だった。
受験する中学も その先の大学まで、パパと同じところに行かなければならない。
小さいころから習い事をたくさんやらされた。
パパが休みの日曜日以外は毎日何かに通っていた。
英語、ピアノ、塾、科学教室…
流石に5年になって塾が週4になったので、英会話教室以外は辞めさせてもらえた。
ママ曰く、僕はパパに似て、頭がいいから人付き合いなんてしなくてもいいらしい。
中学に入ったら、〝会話が弾むお友達〟ができるらしい。
だから小学校の友人が少なくても気にするな。
ということだろう。
実際、僕も他人と話すのは苦手だ。
友達もほとんどいない。
放課後遊ぶ時間なんてないし。
同級生は、要領を得ない話し方だし、僕が理論的に話してやると、早口で何を言ってるのかわからない とかふざけたことを言う。
僕の会話のレベルについてこられないだけじゃないのか。
女子にいたっては低レベルな会話が多くて、話す気にもならない。
人の悪口ばっかり言ってるやつとか、大声で人の小さなミスを批判するやつとか。
あと、最もよくわからないのが〝恋バナ〟の類いだ。
だいたいクラスでモテるやつは決まってる。
野球、サッカー、バスケ系男子。
市の小さな大会でも優勝すれば、女子の目はハートに輝く。それを助長するように朝の全校朝会で表彰される。
全国模試でトップ100に入っても学校では表彰されない。
学校は勉強する場所のはずなのにどうしてだ。
数人の人気者がほとんどの女子のターゲットになる。
その争いは、学年が上がるにつれ熾烈になる。
一番馬鹿らしいのは、女子のヒエラルキーだ。
だいたいヒエラルキーのトップに君臨するのは性格極悪な女子。
ズル賢くて、裏表があって、一人じゃ行動できないふりして、仲間にしない女子を追い出す。
モテるやつは、こういう女子の表面しか見せられないから、きっとわからないだろう。
僕はそういう女子の裏面しか見てこなかったので、よくわかるんだ。
席替えの時、僕の隣になっただけで、小声で
「さいあく」
と囁かれたり。
グループ研究で発表があれば、
「周防頭いいから全部やっといてー。
私達バカだからついてけないしー。」
といって、まわりを巻き込み人を傷付けるやつもいた。
全員がそうではないこともわかっている。
しかし、ヒエラルキートップは
他に有無を言わせぬ圧力がある。
優しい女子は従うしかない。
それは全てにおいてそうだった。
男子校も、この煩わしい女子がいないなら天国のように思えた。