豊中まわり

進路

深瀬を嫌いになれないまま、修学旅行を迎えた。

クラスメイトはここ数日浮き足立っていた。

バスの座席、部屋分け、グループ分け。

色々な思惑が教室中に充満していた。

僕はどうでも良かった。

義務教育でなければ、欠席したい。

深瀬も同じように見えた。


修学旅行1日目。

宿泊先のホテルのロビーで、担任の先生と二人で話している深瀬が目に入った。

何を話しているのか気になって、近づくと
先生が

「周防!お前もちょっとここに座れ!」

と呼び止められた。

「周防、深瀬と同じ塾なんだろ?
お前ら二人、飛び抜けて賢いからてっきり二人とも中学受験だと思ってたんだ。
なのに、深瀬は受験しないって聞いてな。
いや、個人の自由で口を出すことじゃないんだが、もったいないと思ってな。
深瀬に聞いたら周防は知ってるっていうから、ちょっと意見を聞いてみたくてな。」

普段聞けないことを旅先なら聞ける!
みたいな行動をとっている担任の先生が面白かった。

教室ではこの手の話はタブーだ。

今まで深瀬にも何となく聞きづらくて、聞いていなかった。

僕も興味があったので参加することにした。

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