豊中まわり
修学旅行、帰りのバスの雰囲気は良くなかった。

噂話では、氷上は数人の女子の告白を断り、そのうち一人はうちのクラスの三上早妃だ。

僕にとってはいい気味だが、早くも三上を励ます会的な輪ができつつある。

たまたま三上が後ろの席らしく、ひそひそ話が漏れ聞こえる。

「早妃、超かわいいのに、あいつどうかしてるよー。」
「早妃より可愛い子なんていないよ。」
「照れてただけじゃないの?もう一回コクったらいけるかもよ!」

本当に友人なのだろうか。

それはアドバイスや励ましではなく、嘘だ。

客観的に見たとしても、三上は氷上を落とせない。

三上の性格悪さを氷上が知らなかったとしても だ。

氷上が深瀬を好きなら、三上を好きになることはない。

きっと、うるさい自分主張型女子は嫌い。

集団行動しかできない女子も嫌い。

凛としているけど、人に対して思いやりをもてるタイプがすきなんだろ。

氷上のことは好きではないが、好みが同じなのでわかる。


今、氷上と深瀬の話をしたら盛り上がれるかもしれない。

深瀬を好きになったら他は目にも入らない。

他の女子と話しているのを深瀬に見られるだけでも嫌だろう。

深瀬結莉はそれだけ人を惹き付ける。

簡単には諦められない。
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