豊中まわり

終われぬ思い

夏休みが始まり、受験勉強一色になった。

毎日のように 塾に通ったおかげで、たまに 深瀬に会えた。

家では集中できない
と ママに嘘をついて、塾の自習室で 偶然 深瀬に会えることを願った。

深瀬も 自分の部屋が暑い‼
と、たまに自習室で勉強したり、こっそり 本を読んでいた。
家で読んでいると 怒られるのかな。

塾での深瀬は、学校にいる時より 少し明るい気がした。
塾は 全体的に 男子が多く、嫉妬されずにすむから かもしれない。

しかし、深瀬は どこにいても 人を惹き付ける。

塾でも 深瀬に向けられる視線を よく感じた。

同い年だけでなく、中学生、バイト講師の中にも 疑わしいやつがいた。

僕は 勝手に 深瀬の騎士になったつもりだった。

深瀬に話しかけたそうなヤツがいると、わざと邪魔した。
難解な問題を 深瀬に質問し、解き方を 一緒に考えた。
こんなに楽しい夏休みは、後にも先にも ないだろう。

夏休みが終わると、
あっという間に秋が来て、
受験の冬になった。


「周防君なら絶対受かるよ。頑張ってね。」

受験前に 深瀬が 励ましてくれた。

何よりの 御守り だった。

予定通り、第一志望に合格した僕は、学校と塾へ 報告に行った。

塾に来ていた深瀬に 報告すると、自分のことのように 喜んでくれた。

もうすぐ 別れの時間が 近づいていた。

僕は 何もできない。

君が 男だったら良かったのに。

親友なら なれる気がした。

一緒の中学 だって行ける。

ずっと 一緒 にいられる。

馬鹿馬鹿しいことを 考えた。

君のその白くて美しい肌や、長い髪が 好きなのに。



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