豊中まわり
深瀬結莉

1ー6

朝、登校中 校門の前のベンチを見て、昨日氷上がここで待っていてくれたことを思い出した。

その後抱きしめられたんだ。

ずっと好きだった…って言われたんだ。

思い出すと一人で顔が赤くなる。

1ー6の教室に入ると、

「ゆうり!なんか噂聞いたんだけど。
昨日校門で会ってたのって誰?誰?誰?もしかして彼氏~?」

友達の美桜(みお)がすごい勢いで近づいてきた。

しまった。誰かに見られていたか。

友達には自分から報告したかったのに。
しかし美桜は、そんなこと全く気にする様子もなく、私の席の前に 前のめりで座った。

私は、少し小さめの声で話始めた。

「うん。あの…正式には昨日から付き合うようになったというか…ちゃんと付き合ってから報告しようと思ってた というか…」

「おめでとーーー。で、誰?どんな人?」

美桜の大きな声にまわりのクラスメイトも集まってきた。

「えっ‼ 深瀬 彼氏できたの? 誰?」

「ゆーり 彼氏いなかったの? いると思ってたー」

「深瀬、付き合う気ないって言ってなかった?」

次々投げ掛けられる質問に困惑した。

「えっと。小中同級生の人で、日曜日困っているところを助けてもらって…で付き合うことになりました。」

だいぶ省略したが、勝手に氷上の個人情報を曝すのも良くない。

美桜には後で詳しく説明しよう。

「良かったねー。写メないのー?」

「顔みたーい!」

と、女の子達が興味本位で騒ぐ中、一人、明らかに暗いトーンで否定的な言葉が飛んできた。

「大丈夫なの?助けてもらったから付き合うって、安易じゃない?本当に好きなの?騙されてるんじゃないの?」

佐藤君だ。いつも穏やかな感じなのに今日はちょっと違う。

「騙されてない…と思う。」

一昨日だったらこの質問は心に刺さりそうだけど、昨日気持ちを確認した。大丈夫。

「…」

佐藤君は何か言いたげだったが、チャイムがなり皆、席に着いた。


4月から通うこの高校は、穏やかでのんびりしている。

中学の時より雰囲気はだんぜん良い。

女子も男子もいい意味で異性に慣れてなく、かといって排他的でもない。

そんなこの学校は毎日が楽しい。





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