豊中まわり
1階に降りると、

テーブルに見たことないカップと、皿が出ていた。

母さんが楽しそうにテーブルをセッティングしている。

「さ、こっち座って。紅茶でいい?」

すごい上機嫌だ。

深瀬と付き合うと 母さんに報告したあの日から、母さんは大喜び。

よくやった。でかした。と、

俺の高校合格の時より喜んだ。

浮かれた母さんが、深瀬と話している。

すると母さんがとんでもない提案を出した。

「涼ね。高校入って成績落ちてるのよね。
まぁ、サッカーやりに入ったような学校だけど、下から数えた方が早いのは、ちょっと問題なの。
でね、結莉ちゃん。
空いてる日でいいから、
涼の家庭教師やってくれない?
タダでとはいわないわ!」

なんてこと言うんだ。母さん。

深瀬が家庭教師なんて…家庭教師…

考えただけで鼻血がでそうだ。

勉強になんてなるわけない。

「そんな…勉強を少し見るくらいなら、会った時に教えます…。」

深瀬が控えめに答えた。

母さんは 追撃の手をゆるめない。

深瀬を逃がさない。

「涼、けっこう忙しいでしょ?
だから定期的に勉強させたいの。
で、バイト代もらうのが嫌だったらこうしない?
中間、期末で、少しでも順位が上がったら、次のテストまでの間、デート代は全部涼が払う。
もちろん私が出すわ。
もし下がったら、割り勘。
ってことでどう?
それなら涼もやる気だすし、
結莉ちゃんにも悪い話じゃないでしょ?」

深瀬は少し考えて、

「それなら…」

と応えた。

待ってくれ。俺の意見は…

でも深瀬が家庭教師…


という素敵な響きに俺が口を挟む訳もなかった。

結局、週に1回 学校終わりに、魅力的な家庭教師に来てもらうことになった。

完全に母さんの策略だ。


「ちゃんと勉強するのよ。涼。余計なことしないのよ。」

釘を刺された。

わかってるよ。わかってるけど、

とても勉強できる気がしない。





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