豊中まわり
母さんは言いたいことだけ言って、

買い物に行ってしまった。

気を使ったつもりか…

完全に二人きりになってしまった。

これは、またヤバイ。

部屋に戻ると、深瀬がいきなり、

「学校の教科書見せて。傾向と対策考えてくる。」

「えぇ!本気なの?」

「本気だよ。絶対成績上げようね。
私も勉強になるし!今もちょっとやる?」

「えぇ!勉強すんの?」

有無を言わせず、いきなり勉強会になった。

まぁ、この方が理性を崩壊させずにすむか…

しかし、俺の考えが甘かった。

真横で囁かれる深瀬の声。

少し動いたら、すぐ触れられそうな距離。

そしてまたあの誘惑の香り。

ぼーっとしていたら

「ちゃんと聞いてる?」

と怒られた。

その怒った顔がかわいくてかわいくて、

俺を見上げる瞳にまた吸い込まれた。

ずっと触りたかった耳に触れ、

彼女の頬をそっと包み、

怒った唇を塞いでしまった。

あぁ。もう病気かもしれない。

唇を離すと深瀬が、小さな声で囁いた。

「氷上…これじゃぁ…勉強できないよ…。
この問題解き終るまで、キス禁止ね。」

「じゃあ、解けたら していいの?」

思わず調子に乗ってしまった。

絶対怒らせた…

そっと深瀬をみると

恥ずかしそうにこっちを見て、うなずいた。

「いいの?どの問題?」

本当にいいの?

問題解けたら公認キス?

うなずいた ってことは嫌がってはない?

キスしてもいいの?

俄然やる気が出てきた。

深瀬はきっと俺にあきれてるだろうな。

でも、この衝動はもう止められない。

せめて問題を解くまで我慢しよう。

俺はその日、今まで全く解らなかったベクトルの問題を3問連続正解し、

その度 深瀬にご褒美をもらった。

正解する度、深瀬の照れた顔に欲情し、

深瀬の唇を味わった。

深瀬は、次からもっと難しい問題持ってくる!と少し怒っていた。

本当に成績が上がるかもしれない。


あぁ。俺は理性を保つはずだったのに、

完全に欲望のままの高校生だ。

でも深瀬に信じて欲しい。

俺は深瀬にしか、こんな気持ちにならない。

いつも君のことを考えている。

君の全てが いとおしい。

自分を抑えられなくなるのも

目にはいるのも

触れたいのも

君だけなんだ。

ずっと。
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