豊中まわり
周防修治

再会

附属の高校にも慣れた7月初め、

久しぶりに母親から連絡が来た。

「修ちゃん。パパが夏休み長めに取れるらしいから、久々に家族で海外に行きましょう!
だから夏休みの間はこっちに帰って来てくれる?」


勝手な都合を押し付けられた気はしたが、行き先はヨーロッパだというし、本場で英語を試したい僕は、快諾した。

むこうに行くなら夏期講習は実家の近くで受けるか…と良さげな所を探して申し込んだ。

夏休みが始まり、夏期講習のために、すぐに実家に帰ってきた。

3年とすこし離れただけなのに、町が随分変わった気がした。

駅まで派手な外車で迎えにきた母親は、僕の伸びた背とまた低くなった声に、驚いていた。

「修ちゃん。ますますかっこよくなって。モテて困っちゃうわね。」

能天気な人だ。

男子校でどうやってモテるんだ。

確かに学校では、密かに友達の紹介で女の子と遊んでるやつはいる。

僕も時々誘われる。

特に高校入ったあたりから頻繁に。

でも正直、知らない女子と話すのは苦手だし、話したいとも思わない。

だから、毎回断っている。

夏休みもそれ系の誘いが多くてウザかった。

正直、実家の方がましだと思って来た。

しかし、開始5分で、母親の甲高い声と、

止まることのないお喋りにうんざりしていた。

ふいに車が、前に通っていた塾の近くでとまった。

眼鏡を押し上げ 塾を見上げ、

いるはずもない深瀬を探していた。

もう塾は変えたのかな?

志望の高校には行けたのかな?

今どんな風になっているのかな?

やっぱり彼氏とかいるのかな?

僕のこと覚えているかな?


瞬時に色んな思いが溢れだした。

遠くにいれば、押し込めておける気持ちも

近くにいると思うだけで、思い出が色付く。

僕の中の理想の女の子は 小6の思い出で止まったままだ。

会いたい。会いたい。会いたい。

そう思いながら毎日を過ごした。

ただ会いたい。

少し大きくなった背が、自分に自信を与えたのだろうか。

ようやくこの町に帰ってこようと思えた。

チビで頭でっかちな俺のままでは、偶然会えたとしても目を反らしてしまいそうで。

でも、1ヶ月くらいこの町に居たからって、そうそう会えるものでもない。

いったい自分はどうしたいのか

会いたいのか 会いたくないのか

見られたいのか見られたくないのか

自分でもわからなかった。


とりあえず今は、このうるさい話を聞き流して

明日からの予備校に備えよう。



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