豊中まわり
鈍感
氷上に会うのは1週間ぶり。
あの外でのキレ気味なキス以来。
今日は家庭教師の日だ。
ちょっと早く着いたので、弟の翔君と勉強を始めていた。
この翔君。氷上にそっくりで、小6の氷上がそこにいるみたいで、すごくかわいい。
しかも、すごく勉強熱心で、私までうれしくなる。
まだ子どもだからか、一生懸命話す姿が可愛くて可愛くて。
ついつい話がはずんじゃう。
「ゆうりは教え方、うまいな。学校より100倍わかるよ。先生になったらいいのに。」
「ありがとー。翔君。じゃあもう一問やろっか。」
盛り上ってたところに、氷上が部活から帰って来た。
ちょっと緊張する。
リビングで私を見た氷上は
「言ってくれたら迎えに行ったのに。母さんは?」
んん?機嫌悪い?
「まだ明るいから、ちょっと早めに来ちゃった。お母さんは、ちょっと買い物らしいよ。」
「ふうん。」
氷上は そのまま部屋に行って、
着替えをとって シャワーを浴びに行ってしまった。
夏だし、暑いし、そりゃ帰ってきたらさっぱりしたいだろうけど、
私のこと いない 存在みたいになってない?
やっぱり、私自身にはあんまり興味ないのかな。
まさか、お母さんいないと勉強もしない?
そのまま部屋に行ったら、よくない気がする。
こんな気持ちのまま、エッチなことだけ先に進むのは、なんか違う気がする。
今日は部屋に行かず、ちゃんと目をみて話すんだ。
私の決意を知らない氷上は、シャワーを浴びて出てきた。
氷上を見て、心臓が跳ねる。
濡れた髪がおそろしく似合う。
お風呂上がりなんて初めて見たけど、なんてセクシーなんだろう。
今さらだけど、モテるのわかる。
焼けた肌に 引き締まった筋肉。
もともと整った顔だけど、今日はやけに色っぽい。
隣に座ってくれたのはいいけど、ドキドキして目が見れない。
「今日は数Aだよね。いい問題あったから持ってきたんだ。」
あわててプリントを出そうとして、
床にバラバラと落としてしまった。
「あぁ。ごめん。」
あせって拾おうとすると、氷上が一緒に拾ってくれた。
不意に顔が近づいて、氷上の髪からいい香りがした。
なんだか すごく 触れたくなった。
少し濡れたその髪に
日に焼けたその肌に。
少し目があって、氷上の澄んだ瞳に
吸い込まれそうになった。
ヤバイ。
このまま見ていたら、すいこまれる。
あわてて、目線をプリントに戻した。
ここはお家のリビング。
一旦、冷静さを取り戻そう。
弟君もいる。でも、近づきたい。
また避けられるかな。
でも…でも…
隣に座っている氷上に、
勉強を教える素振りを使って少し近づいてみた。
膝と膝が触れあう位の距離まで縮めた。
数学どころではない。
膝に全神経が集中してしまう。
触れ合っている部分が熱く感じる。
「深瀬?これ合ってる?」
ふいに耳元で声をかけられてびっくりした。
驚いて離れてしまった。
「えっ!うん。今見るね。」
ダメだ。ダメだ。集中できてない。
こんなんじゃ家庭教師失格だ。
「深瀬、今日赤くない?熱ある?」
あぁぁ。ばれてる。
氷上に欲情して赤くなっていることに。
「熱、ない。大丈夫。ちょっと慌てただけ。」
余計にあやしい。私。
「でも、耳まで赤いぞ。ちょっと…」
と言って、氷上が私の顔に触れるから、ますます顔が火照ってしまった。
「違うの…違うの…氷上が…」
「俺が?何?」
恥ずかしい 恥ずかしい 恥ずかしい
穴があったら入りたい。
「……氷上に見とれてたら赤くなっただけなの。ごめんなさい。集中します。」
「えっ…」
あぁぁ。氷上もあきれてるよね。
目をみて話すどころか、
見とれて赤くなってるなんて。
ただでさえ避けられてるかも って時なのに。
「俺も。」
「えっ?」
「俺も見とれてた。」
「嘘!普通だったよ。氷上。」
「見とれててボーっとしてたの バレないようのに必至。」
「嘘‼ 勉強したくないからボーっとしてたんじゃないの?」
「深瀬が隣にいて、勉強どころじゃないよ。毎回。」
「私に興味あるの?」
「今さら何言ってんの?
興味とかそういったレベルじゃないよ。」
「でも、なんか避けられてたし。
つきあってみたら ガッカリだったのかな…って。」
「なんで…なんでそういう…
ガッカリなわけないよ。
どうなったらガッカリになるんだよ。
むしろ、想像以上で毎回大変なんだけど。」
「でも、目を合わせてくれないもん。」
「それは…ごめん。
俺…深瀬の目をみたらダメなんだ。
なんか…考えられなくなる。」
「今日もなんだか不機嫌だもん。
もう嫌われたのかと思った。」
「嫌われた…ってあり得ないし。
嫌われるならオレの方だろ。
不機嫌だったのは……
帰ってきた時、翔のこと名前で呼んでたから。
俺のことは苗字呼びなのに。
ごめん。カッコ悪すぎる…」
「氷上だって…深瀬っていうから。
昔からそうだし。」
「じゃあ今日から結莉ってよんでいい?」
「えっ! もちろんいいけど…
私も 涼…って呼んでいい?」
二人で顔を見合わせて笑った。
勝手な想像と妄想で、氷上の気持ちが見えてなかった。
目をみれない理由は、今日私もわかった。
氷上の瞳に釘付けになって、
何も考えられなくなった。
あの感覚ならばわかる。
同じものを氷上も感じているなら
それは信じられる。
あの外でのキレ気味なキス以来。
今日は家庭教師の日だ。
ちょっと早く着いたので、弟の翔君と勉強を始めていた。
この翔君。氷上にそっくりで、小6の氷上がそこにいるみたいで、すごくかわいい。
しかも、すごく勉強熱心で、私までうれしくなる。
まだ子どもだからか、一生懸命話す姿が可愛くて可愛くて。
ついつい話がはずんじゃう。
「ゆうりは教え方、うまいな。学校より100倍わかるよ。先生になったらいいのに。」
「ありがとー。翔君。じゃあもう一問やろっか。」
盛り上ってたところに、氷上が部活から帰って来た。
ちょっと緊張する。
リビングで私を見た氷上は
「言ってくれたら迎えに行ったのに。母さんは?」
んん?機嫌悪い?
「まだ明るいから、ちょっと早めに来ちゃった。お母さんは、ちょっと買い物らしいよ。」
「ふうん。」
氷上は そのまま部屋に行って、
着替えをとって シャワーを浴びに行ってしまった。
夏だし、暑いし、そりゃ帰ってきたらさっぱりしたいだろうけど、
私のこと いない 存在みたいになってない?
やっぱり、私自身にはあんまり興味ないのかな。
まさか、お母さんいないと勉強もしない?
そのまま部屋に行ったら、よくない気がする。
こんな気持ちのまま、エッチなことだけ先に進むのは、なんか違う気がする。
今日は部屋に行かず、ちゃんと目をみて話すんだ。
私の決意を知らない氷上は、シャワーを浴びて出てきた。
氷上を見て、心臓が跳ねる。
濡れた髪がおそろしく似合う。
お風呂上がりなんて初めて見たけど、なんてセクシーなんだろう。
今さらだけど、モテるのわかる。
焼けた肌に 引き締まった筋肉。
もともと整った顔だけど、今日はやけに色っぽい。
隣に座ってくれたのはいいけど、ドキドキして目が見れない。
「今日は数Aだよね。いい問題あったから持ってきたんだ。」
あわててプリントを出そうとして、
床にバラバラと落としてしまった。
「あぁ。ごめん。」
あせって拾おうとすると、氷上が一緒に拾ってくれた。
不意に顔が近づいて、氷上の髪からいい香りがした。
なんだか すごく 触れたくなった。
少し濡れたその髪に
日に焼けたその肌に。
少し目があって、氷上の澄んだ瞳に
吸い込まれそうになった。
ヤバイ。
このまま見ていたら、すいこまれる。
あわてて、目線をプリントに戻した。
ここはお家のリビング。
一旦、冷静さを取り戻そう。
弟君もいる。でも、近づきたい。
また避けられるかな。
でも…でも…
隣に座っている氷上に、
勉強を教える素振りを使って少し近づいてみた。
膝と膝が触れあう位の距離まで縮めた。
数学どころではない。
膝に全神経が集中してしまう。
触れ合っている部分が熱く感じる。
「深瀬?これ合ってる?」
ふいに耳元で声をかけられてびっくりした。
驚いて離れてしまった。
「えっ!うん。今見るね。」
ダメだ。ダメだ。集中できてない。
こんなんじゃ家庭教師失格だ。
「深瀬、今日赤くない?熱ある?」
あぁぁ。ばれてる。
氷上に欲情して赤くなっていることに。
「熱、ない。大丈夫。ちょっと慌てただけ。」
余計にあやしい。私。
「でも、耳まで赤いぞ。ちょっと…」
と言って、氷上が私の顔に触れるから、ますます顔が火照ってしまった。
「違うの…違うの…氷上が…」
「俺が?何?」
恥ずかしい 恥ずかしい 恥ずかしい
穴があったら入りたい。
「……氷上に見とれてたら赤くなっただけなの。ごめんなさい。集中します。」
「えっ…」
あぁぁ。氷上もあきれてるよね。
目をみて話すどころか、
見とれて赤くなってるなんて。
ただでさえ避けられてるかも って時なのに。
「俺も。」
「えっ?」
「俺も見とれてた。」
「嘘!普通だったよ。氷上。」
「見とれててボーっとしてたの バレないようのに必至。」
「嘘‼ 勉強したくないからボーっとしてたんじゃないの?」
「深瀬が隣にいて、勉強どころじゃないよ。毎回。」
「私に興味あるの?」
「今さら何言ってんの?
興味とかそういったレベルじゃないよ。」
「でも、なんか避けられてたし。
つきあってみたら ガッカリだったのかな…って。」
「なんで…なんでそういう…
ガッカリなわけないよ。
どうなったらガッカリになるんだよ。
むしろ、想像以上で毎回大変なんだけど。」
「でも、目を合わせてくれないもん。」
「それは…ごめん。
俺…深瀬の目をみたらダメなんだ。
なんか…考えられなくなる。」
「今日もなんだか不機嫌だもん。
もう嫌われたのかと思った。」
「嫌われた…ってあり得ないし。
嫌われるならオレの方だろ。
不機嫌だったのは……
帰ってきた時、翔のこと名前で呼んでたから。
俺のことは苗字呼びなのに。
ごめん。カッコ悪すぎる…」
「氷上だって…深瀬っていうから。
昔からそうだし。」
「じゃあ今日から結莉ってよんでいい?」
「えっ! もちろんいいけど…
私も 涼…って呼んでいい?」
二人で顔を見合わせて笑った。
勝手な想像と妄想で、氷上の気持ちが見えてなかった。
目をみれない理由は、今日私もわかった。
氷上の瞳に釘付けになって、
何も考えられなくなった。
あの感覚ならばわかる。
同じものを氷上も感じているなら
それは信じられる。