豊中まわり
俺はここUSJでわかったことが二つある。

一つは深瀬が鈍感ということ。

もう一つは、深瀬は目を引くということ。

こういうとこに来るとよくわかる。

深瀬が一人になった時を狙って、声をかけられること、なんと3回。1日で。

3回目は俺も笑った。

俺が食事やドリンクを買いに行ってる間。

トイレに行っている間。

一瞬なのに帰って来たら、100% からまれていた。

だいたい男2~3人に声をかけられている。

急いで行って、

「結莉‼ 」

って呼ぶと、子犬みたいな怯えた目で俺を見て走ってくる。

男達は、やっぱり男がいんのか…的な顔でこちらを見る。

これが3回。ありえないだろ。

俺がいなくなったら100%ナンパされるって。

これで女子二人でプール行くとか考えられない。

危ない。危なすぎる。

「結莉…ナンパされすぎ…」

「ごめん。彼氏を待ってる、って言ったんだけど、『女の子と来てるんでしょ?なら一緒に回ろう。』って、聞いてくれなくて。
きっと私、彼氏なんかいなさそうに見えるんだね。」

おーい。どう考えたらそうなるんだ。

「結莉。違う。ホントに危ない。」

多少の苛立ちを隠せない俺は、深瀬の手をとり、

「離さないから。離れないで。」

深瀬はうなずき、極上の笑顔を見せた。

深瀬の手を離してはいけない。

すぐ別の誰かに狙われて、連れ去られてしまう。

どんどん魅力的になる深瀬に惹かれるのは俺だけじゃない。

自分の理性が保てないからって、

適正距離を保ってる場合じゃない。

実際、深瀬に誤解されてるし。

その後、しっかり手を繋いでパーク内をまわった。

夏は日が長いけど、楽しい時間はすぐ過ぎてしまう。

薄暗くなり夜のショーが始まった。

「私ね、USJがこんなに楽しいとこって知らなかった。ありがとう。」

「俺だって。また勉強頑張って、一緒に来ようよ。」

「涼がちゃんと聞いてくれたら、来れるかもね。」

「いつも聞いてるよ。ただ…ちょっと誘惑が多いだけで…」

大きな花火の音で、語尾はかきけされた。

花火を見上げる深瀬が子供みたいに楽しそうで、俺まで嬉しくなった。



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