豊中まわり
なんとか暴走せずにすんだ俺は、

これ以上結莉と近づくと危険なので

結莉の本棚へと目をやった。

様々な本が置かれている中で、明らかにアルバムっぽいのがあった。

小さい頃の結莉を見たい興味もあったし、衝動にかられる俺自身の気を紛らす意味もあって、

「あれアルバム?見てもいい?」

と、目線を本棚へやった。

「いいよー。でも変なの写ってないかなー」

といいながらアルバムを取りだしてくれた。

「赤ちゃんのころはあるんだけど、
幼稚園くらいからデジタルで、写真はないんだよー。だから幼稚園とか学校で買った写真と、あとはもらった写真しかないよー。」

「うちもそうかも。ちっちゃい結莉が見たいだけだから大丈夫だよ。」

といいながらアルバムを開いた。

横で結莉が一緒にアルバムを見てくれるので、かなり密着が気になるが…

最初のアルバムは赤ちゃんのころ。

この頃から白い肌で、色素の薄い目と髪の毛。かわいいなぁ。

2~3歳の頃の顔は、今の結莉の面影がバッチリある。

2冊目の幼稚園の写真を見ていて、ひとつ 気になることがあった。

結構な確率で、同じ男の子が横にいる。

しかもハーフ系イケメン。

結莉と同じく色素が薄いかんじだが、顔が派手。

アイドルグループに入れそうな位。

「けっこうこの子と写ってるね。」

と、その男の子を指差し言うと、

「あー。幼稚園の時、仲良かったんだ。
私、女の子の友達少なくって
この子、男の子なのに女の子より優しくて。
いっつも二人で折り紙とかぬりえやってたらしいよ。暗いでしょ。」

「暗くないよ。っていうかイケメンだね。」

暗いどころか、この二人が並んでいたら、誘拐されるレベルだろう。

「そうなんだよー。ママがねイケメン好きで、入園式、私の隣がその子で、声かけたらしいよ。
そっからママ同士仲良くなって、小学校の3年くらいまでよく遊んでたんだ。」

小3?けっこう大きくなるまで遊んでたんだな…

いやいや。心狭すぎだな。俺。

そんな俺のモヤモヤに気付かない結莉は、更に話を続けた。

「年中さんぐらいの時、仲が良すぎて、年長の時、クラス離されたらしいよ。
このままじゃ二人とも同性の友達が出来ないって。先生が。
あんまり覚えてないんだけどね。私。」

モヤモヤが膨らむ。

まだ俺と出会ってもいない頃に嫉妬しても仕方ないのに…。しかも幼稚園児に嫉妬する俺。ヤバイな。

「今もイケメンなの?」

この卑屈な聞き方。嫌なやつだな俺。

今も会ってるのか知りたいなんて。

プライドが邪魔して聞けないからって…

「転校してから知らないんだよ。
ママ同士はまだ連絡とってるらしいけど。
なんか小学校入ったら、女の子がいっぱい群がってて、その頃からあんまりしゃべってなかったし。
優しいのと優柔不断なのって紙一重だよね。」

言葉が胸に刺さった。

俺に言われた言葉かと思った。

母さんの言うとおりだ。

そいつが小学校の時、結莉が好きだったかは知らないが、優しさが優柔不断と思われて、距離を置かれたんだ。

「優柔不断 嫌いなの?」

不安になって聞いてみた。

「誰にでも優しい人って、誰でもいいみたいに見えるじゃない?
本当はそうじゃなくても。
最近は、そういう人は誰でもいいんじゃなくて、誰にも強い興味がないだけかも…って思うんだけどね。
その頃は、ただ、この子私じゃなくても誰にでも優しいんだ…じゃあ私はいいや。って思ったんだよね。」

そう言って、少し悲しげな表情をするから、ますます不安になって

「俺…大丈夫?優柔不断じゃない?」

女々しい。女々しすぎる。

でも聞いてしまった。

「涼は…優柔不断ではないけど…
行動が読めない…のが困ってる。
読めないからドキドキするのかな?」

少し照れた顔で見上げた結莉が

また俺を壊す。

せっかく我慢してたのに。

触りたかった耳元に触れてしまった。

触れたら止まらない。

そのまま唇を塞いだ。

唇は拒まれたことがない。

ゆっくりと味わい、更に奥を味わう。

なんて気持ちがいいんだ。

結莉以外とキスしたことがないから比べようがないけど、結莉の唇はサラリとしていて、柔らかくて、本当に気持ちいい。

頭の奥がふわっとなって、だんだん何も考えられなくなる。

あまりの気持ちよさに、ついベッドに押し倒てしまった。

味わってみたかった耳を攻め

俺をいつも誘惑する首筋に 初めてキスしたら、何かスイッチが入ったように、本格的に止まらなくなった。

もう、ずっとずっと触りたかった。

服の下に手を入れ、いつも盗み見していた胸に触れた。

繊細なブラジャーの上からでもわかる柔らかい膨らみ。

直に触りたい。

そう思ってブラジャーを外そうとした時、

「涼…待って…下にママもいるし…。」

結莉の言葉に我に返った。

何をしてるんだ。俺は。

彼女の家に初訪問で、何押し倒してるんだ。

最低じゃないか。何やってるんだ。

ベッドから起き上り結莉から離れた。

「ごめん…」

「私こそごめん…あの…嫌とかじゃないんだけど、いきなりでびっくりしたというか。
本当にごめん。もったいぶるつもりとかないんだけど。心の準備が出来てなかったというか……いつできるんだって話だよね。昭和じゃないんだし。」

本気で反省しなければいけないのは俺なのに
結莉は、まるで自分が悪いかのように謝った。

自分が本当に情けなくて、嫌になった。

さっき「行動が読めないとこが困る」って言われたばかりなのに…。自己嫌悪。

「俺が悪い…ごめん。」

気まずい雰囲気になった。

窓から入る光が少なくなり、夕暮れを知らせていた。

母さんから、「女の子の家は、晩御飯までにはおいとましなさい。」って言われてたことを思い出した。

「そろそろ帰らないと。ごめん。」

結莉に申し訳なくて、目を合わせられなかった。

「うん…」

元気のない返事が聞こえた。




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