豊中まわり
つきあうことの意味
部活が終わり、自転車を飛ばした。
今日は結莉の家庭教師の日。
さっきメールが来ていて、もう家で弟と勉強始めているらしい。
俺も早く帰って、結莉に会いたい。
会うのはあの文化祭の日以来。
長瀬が 宣戦布告してきたあの日から
不安が付きまとう。
結莉には、長瀬が近付いてきたら危ないから、注意するようには言っている。
アイツがもしあらわれたら すぐ連絡するように。
結莉は、からかっただけじゃない?
とか のんきなこと言ってるけど、
絶対アイツは何かしてくる。
結莉は絶対誰にも渡さない。
触れさせない。
息を切らして家に帰ると、楽しそうな笑い声がしてホッとした。
リビングで、母さんと結莉が喋っていた。
「おかえりー。」
と二人の声がハモって、また笑っていた。
とりあえずシャワーを浴びて、リビングに行くと、母さんがうれしそうに、
「今日ね、結莉ちゃん晩御飯食べていってくれるんだって。
翔の勉強はもう終わったし、テーブルの上、ごはんの準備するから、部屋で勉強してきて。」
マジで‼ ラッキー‼ 浮かれる心を抑えて、
「おぉ。」
となんでもないかのようにふるまった。
母さんに下心がバレると、リビングに別のテーブルを出されかねない。
それなのに、
「しっかり勉強すんのよ。涼。」
釘を刺された。
結莉もクスクス笑っている。
なんだか余計にやりにくい。
久しぶりに部屋で二人きりになった。
ドアを閉めると、空気がかわる。
涼しくなってきたせいで、薄着ではなくなったけど、
ピタリとした服が体のラインを強調する。
胸のふくらみを見て、アイツを思い出した。
「もう触った?」と、聞いてきたアイツ。
触ったさ。
ブラの上からだけど。
ちょっとだけだけど。
当分触らないって、決意したばかりなのに、アイツがあんなこと言うから意識してしまう。
早く結莉を自分のものにしたい…
俺だけが結莉の全てを知りたい。
今すぐベッドに押し倒して、
息ができないほどキスをして、
纏う服を全部脱がして、
結莉の全てを見たい。
そして、触れたい。
感じたい。
勝手な独占欲に嫌気がさした。
「涼?聞いてる」
だめだ。勉強に集中しないと。
この前反省した意味がない。
「ごめん。どこからだっけ?」
数学のプリントに目を走らすと、
結莉が俺を見て、
「そうじゃなくて、なかなか会ってしゃべれないから、ちょっと話したくて。」
心臓が跳ねあがる。
話ってなに?
証拠にもなく、やましいこと考えていたのがバレた?
それとも、こんな俺とは距離を置きたいとかいう話?
まさか、長瀬と付き合うことになったとかじゃないよね?
怖いけど、聞かないわけにはいかない。
「何?何かあった?」
平静を装って聞くと、
「この前のことを踏まえて…私なりの不安とか…決意というのを涼と話したくて…。友達に相談するのもなんか違う気がして…」
「えっ?長瀬のこと?」
「伊織くん?全然関係ないよ。その話ではなくて、この前、うちに来たときに、途中でやめてしまった話…」
長瀬の話でなくて、少しホッとした。
「あぁぁ。あれは俺が悪いんだ。本当にごめん。」
まさかそんな俺の黒歴史を蒸し返すなんて、思いもよらなかった。
「違うの。私達、付き合ってるんだし、嫌じゃないの。本当に。ただ…」
「どうした?」
「こんなの涼に聞くべきではないと分かってるんだけど、誰にも聞けなくて。
悩んでも答えがでなくて。
なら涼に聞くしかないかと思って。」
うつむく結莉が、何を言いたいのか見当もつかない。
「なんでも聞いて。聞いてくれるほうがうれしいし。」
「あのね…あの…疑問はいくつかあるんだけど、いい?」
「いいよ。いつも教えてもらってばっかりだし。」
少し顔を赤らめた結莉が、俺の目を見た。
「ああいうことって、具体的にどういうことするの?」
「えっ。」
言葉が出てこなかった。
まさかこんな風に聞かれると思ってなかったから。
でも、一生懸命考えて、俺とのことを俺に聞いてくれたことが、たまらなく嬉しくなった。
「私は何か準備した方がいいの?
どんなかんじになるの?」
ますます顔を赤らめる結莉に、俺もちゃんと応えなければ、と思った。
「あの…俺もしたことないから、
どんなことが正解かはわからないけど…。
たぶん結莉よりかは、どんなことするのかは知ってる。と思う。
でも、皆同じじゃないと思う。
だから、俺たちは俺たちのやり方があって、それは、人とは違うと思うんだ。」
「そうなの?」
「たぶん、付き合うって、誰も知らない結莉を俺だけが知ってる…みたいなことと思うんだ。
だから、俺だけが知ってる結莉を増やしたくて、他人には絶対見せたり、触らせたりしない部分を、知りたくなるんだ。
でも、お互いがいいって思ってなかったら、先に進んじゃだめなんだと思う。
だから、結莉がこの前、止めてくれて良かった。
結莉が迷ってるなら、進んじゃだめなんだ。」
真剣な表情で俺の話を聞いている結莉に話を続けた。
「だから、俺は、結莉を全部見たいし、触りたい。
結莉の特別になりたい。
でも、体の触れあいだけじゃなくて、
表情とか気持ちとかも、色んなところを見せて欲しい。
俺だけ知ってる笑顔とか、
俺にしか見せない嫌な部分とか。
だから、今日聞いてくれたのはすごいうれしい。
って、なんか答えになってないね。」
「ううん、すごいわかったかも…
だから、涼が触りたい所に触って、私も涼の触りたいとこに触れて、特別になる…それならわかる。私も、私だけが知ってる涼を増やしたい。」
「例えば何を知りたい?」
「何でも知りたいよ。時々、透明人間になって、涼の1日を見たいもん。好きな食べ物とか、嫌なこととか。」
小学生のような質問に思わず笑ってしまった。
「好きな食べ物、焼肉。嫌なことは…結莉と離れることかな。ずっと一緒にいれたらいいのに。」
本音を言ってしまった。
結莉は優しく微笑んで、
「嫌なことは一緒だね。」
と小さくつぶやいた。
「私も涼の触りたいところあるよ…」
と、恥ずかしそうにいうから、
何を言い出すんだ!と思いながらも、何でもない風に
「どこでもどうぞ」
というと、
「いいの?じゃあ…」
と言って、椅子から立ち上がった。
今日は結莉の家庭教師の日。
さっきメールが来ていて、もう家で弟と勉強始めているらしい。
俺も早く帰って、結莉に会いたい。
会うのはあの文化祭の日以来。
長瀬が 宣戦布告してきたあの日から
不安が付きまとう。
結莉には、長瀬が近付いてきたら危ないから、注意するようには言っている。
アイツがもしあらわれたら すぐ連絡するように。
結莉は、からかっただけじゃない?
とか のんきなこと言ってるけど、
絶対アイツは何かしてくる。
結莉は絶対誰にも渡さない。
触れさせない。
息を切らして家に帰ると、楽しそうな笑い声がしてホッとした。
リビングで、母さんと結莉が喋っていた。
「おかえりー。」
と二人の声がハモって、また笑っていた。
とりあえずシャワーを浴びて、リビングに行くと、母さんがうれしそうに、
「今日ね、結莉ちゃん晩御飯食べていってくれるんだって。
翔の勉強はもう終わったし、テーブルの上、ごはんの準備するから、部屋で勉強してきて。」
マジで‼ ラッキー‼ 浮かれる心を抑えて、
「おぉ。」
となんでもないかのようにふるまった。
母さんに下心がバレると、リビングに別のテーブルを出されかねない。
それなのに、
「しっかり勉強すんのよ。涼。」
釘を刺された。
結莉もクスクス笑っている。
なんだか余計にやりにくい。
久しぶりに部屋で二人きりになった。
ドアを閉めると、空気がかわる。
涼しくなってきたせいで、薄着ではなくなったけど、
ピタリとした服が体のラインを強調する。
胸のふくらみを見て、アイツを思い出した。
「もう触った?」と、聞いてきたアイツ。
触ったさ。
ブラの上からだけど。
ちょっとだけだけど。
当分触らないって、決意したばかりなのに、アイツがあんなこと言うから意識してしまう。
早く結莉を自分のものにしたい…
俺だけが結莉の全てを知りたい。
今すぐベッドに押し倒して、
息ができないほどキスをして、
纏う服を全部脱がして、
結莉の全てを見たい。
そして、触れたい。
感じたい。
勝手な独占欲に嫌気がさした。
「涼?聞いてる」
だめだ。勉強に集中しないと。
この前反省した意味がない。
「ごめん。どこからだっけ?」
数学のプリントに目を走らすと、
結莉が俺を見て、
「そうじゃなくて、なかなか会ってしゃべれないから、ちょっと話したくて。」
心臓が跳ねあがる。
話ってなに?
証拠にもなく、やましいこと考えていたのがバレた?
それとも、こんな俺とは距離を置きたいとかいう話?
まさか、長瀬と付き合うことになったとかじゃないよね?
怖いけど、聞かないわけにはいかない。
「何?何かあった?」
平静を装って聞くと、
「この前のことを踏まえて…私なりの不安とか…決意というのを涼と話したくて…。友達に相談するのもなんか違う気がして…」
「えっ?長瀬のこと?」
「伊織くん?全然関係ないよ。その話ではなくて、この前、うちに来たときに、途中でやめてしまった話…」
長瀬の話でなくて、少しホッとした。
「あぁぁ。あれは俺が悪いんだ。本当にごめん。」
まさかそんな俺の黒歴史を蒸し返すなんて、思いもよらなかった。
「違うの。私達、付き合ってるんだし、嫌じゃないの。本当に。ただ…」
「どうした?」
「こんなの涼に聞くべきではないと分かってるんだけど、誰にも聞けなくて。
悩んでも答えがでなくて。
なら涼に聞くしかないかと思って。」
うつむく結莉が、何を言いたいのか見当もつかない。
「なんでも聞いて。聞いてくれるほうがうれしいし。」
「あのね…あの…疑問はいくつかあるんだけど、いい?」
「いいよ。いつも教えてもらってばっかりだし。」
少し顔を赤らめた結莉が、俺の目を見た。
「ああいうことって、具体的にどういうことするの?」
「えっ。」
言葉が出てこなかった。
まさかこんな風に聞かれると思ってなかったから。
でも、一生懸命考えて、俺とのことを俺に聞いてくれたことが、たまらなく嬉しくなった。
「私は何か準備した方がいいの?
どんなかんじになるの?」
ますます顔を赤らめる結莉に、俺もちゃんと応えなければ、と思った。
「あの…俺もしたことないから、
どんなことが正解かはわからないけど…。
たぶん結莉よりかは、どんなことするのかは知ってる。と思う。
でも、皆同じじゃないと思う。
だから、俺たちは俺たちのやり方があって、それは、人とは違うと思うんだ。」
「そうなの?」
「たぶん、付き合うって、誰も知らない結莉を俺だけが知ってる…みたいなことと思うんだ。
だから、俺だけが知ってる結莉を増やしたくて、他人には絶対見せたり、触らせたりしない部分を、知りたくなるんだ。
でも、お互いがいいって思ってなかったら、先に進んじゃだめなんだと思う。
だから、結莉がこの前、止めてくれて良かった。
結莉が迷ってるなら、進んじゃだめなんだ。」
真剣な表情で俺の話を聞いている結莉に話を続けた。
「だから、俺は、結莉を全部見たいし、触りたい。
結莉の特別になりたい。
でも、体の触れあいだけじゃなくて、
表情とか気持ちとかも、色んなところを見せて欲しい。
俺だけ知ってる笑顔とか、
俺にしか見せない嫌な部分とか。
だから、今日聞いてくれたのはすごいうれしい。
って、なんか答えになってないね。」
「ううん、すごいわかったかも…
だから、涼が触りたい所に触って、私も涼の触りたいとこに触れて、特別になる…それならわかる。私も、私だけが知ってる涼を増やしたい。」
「例えば何を知りたい?」
「何でも知りたいよ。時々、透明人間になって、涼の1日を見たいもん。好きな食べ物とか、嫌なこととか。」
小学生のような質問に思わず笑ってしまった。
「好きな食べ物、焼肉。嫌なことは…結莉と離れることかな。ずっと一緒にいれたらいいのに。」
本音を言ってしまった。
結莉は優しく微笑んで、
「嫌なことは一緒だね。」
と小さくつぶやいた。
「私も涼の触りたいところあるよ…」
と、恥ずかしそうにいうから、
何を言い出すんだ!と思いながらも、何でもない風に
「どこでもどうぞ」
というと、
「いいの?じゃあ…」
と言って、椅子から立ち上がった。