晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
私の問いに、康介が怪訝そうに眉を寄せた。


「……変なドラマでも観たか?」

「別に観てないっつの! 真面目に答えてよっ」


ぽかっと右肩を叩いてやると、へらへら笑いながら謝罪の3文字を口にした康介。

絶対反省してない! 見てわかる!


「大切なものが二度と、ねぇ……」


バカにしたかと思いきや、康介の声のトーンが突然低くなった。

このまま流されるものだと思ったから、ちょっとびっくりした。


「俺なら……直前まで足掻くと思う」


あまつさえ、答えをくれるだなんて。


「足掻いて、それでも手に入んねーなら仕方ないって諦めもつくじゃん。ああしとけばよかったこうしとけばよかったって、後で後悔したくねぇもん」

「……足掻くことさえ、許されなかったら?」


言ってることはわかる。康介らしい答えだと思う。

でも真田の場合……足掻くということは、結ばれる2人の間に亀裂を入れるかもしれないのだ。
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