晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
矢継ぎ早に言葉を放つ康介に、反駁したい気持ちが迫り上がる。


答えを求めておいてこんなことを思うの身勝手だと思うけど……ちょっとショックだった。

康介の口から、“諦める”なんて文言が出てきたことが。

康介は絶対に諦めない人だと思ってたのに……。


「……ったく。そんな情けねぇ顔すんじゃねーよ」

「わっ」


呆れたように片眉を下げて、大きな手で私の頭をぐりぐりと撫でてくる。

前髪で前が見えなくなったところに、穏やかなトーンの声が降ってきた。


「お前が考えてることは大体わかるけどな。俺だって、諦めるなんて選択肢はないと思ってたよ。……つい最近までは」


でも、と言葉は続く。


「学んだんだ。世の中には、どうすることも出来ないことが存在するんだって」

「…………」

「まぁ、すっげー悔しいけどさ。その分、前を向くために諦めるって道もきっと存在するんだよ」


康介が、どうすることも出来なかったこと。

怪我をして、練習の成果を試合で発揮できなかったこと。

先輩の引退試合に花を添えられなかったこと。
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