晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
やり取りを続けているうちに、ある問題が浮上した。


──靴箱が移動したらどうしよう?


うちの学校は、クラス順に靴箱が割り当てられる。

すなわち、今まで使っていた靴箱は進級を機に私のものではなくなってしまうのだ。

私達を繋ぐ唯一の糸が切れてしまうんじゃないか、そんなことを危惧してリョータに伝えたところ、


【クラスが発表されたその日に、靴箱の扉に何か絵を描いた付箋を貼っておいて。何色でもいい。

それを目印に、君を見つけるから】


なるほどその手があった、と思わず拍手したくなるような案を与えてくれた。

言われた通り、その日はクマの絵を描いたピンクの付箋を新しい靴箱に貼ってから部活に向かった。何かの拍子に外れてしまわないよう、しっかりとテープも貼って。


それから数日後、リョータからの便りが届いた。

昇降口の向かって左から3列目の靴箱の5段目、右から数えて2番目。そこが、新たに私達を繋ぐ糸となった。




「いよいよ来月だねー」


部活が終わり、練習着から制服に着替えていると、誰かがこぼした声が部室に響いた。

瞬間、指先がすうっと冷たくなったように感じる。
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