晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
さっきの彼女達が言っていた通り、コンディションは大事だ。

だけど、私のコンディションはすこぶる悪い。それも、もう、長いこと。

ううん、最近は拍車を掛けて悪くなったんじゃないかって思う。


私には、もう一度見たい景色がある。

目を疑うほどに綺麗で、あまりに儚くて、泣いてしまいそうになる。そんな景色だった。

でも……。


「もう……ダメなのかもしれないなぁ……」


頭からタオルを被り、絞るように吐く。


高校に入ってからも、必死にフィールドを駆けてきた。毎日早起きして、朝練して。努力だって、人一倍してきたと自負してる。

だけど、何一つ結果に繋がらない。私が見たい景色は遥か遠く、霞みがかったまま。

陸上を好きな気持ちや努力だけじゃどうにもならない、二度と手が届かないんじゃないかって……最近よく、不安になる。




ランチバッグを持ってうちのクラスにやってきた真田と机を突き合わせてお昼を食べていると、衝撃の光景を目にした。


「ちょ……真田、あれって」


思わず、箸で掴んでいたトマトを落としそうになってしまう。

南山他、サッカー部の男子で集まってお昼を食べていた康介を、教室を訪ねてきた女の子2人が、外に呼び出したのだ。

前に立って康介と言葉を交わす女の子の陰に隠れて、頬を赤らめた女の子が幼なじみに熱い視線を送っている。
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