晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「驚くなっつったのに」

「だ、だって……! 入院って、おじさん、大丈夫なの?」


私の記憶の始まりには、既におじさんの姿がある。

それくらい近くにいて、康介と仲良い私の面倒もよく見てくれた。

そんなおじさんが、入院なんて……。


「大丈夫だって。ただのギックリ腰だから」

「……へ?」


ギ、ギックリ腰……?

聞かされた症状は予想の斜め上をいくもので、私は思わず口をあんぐりと開けてしまった。側から見れば、なんて間抜けな顔だったろう。

呆然とする私を置いて、康介がペラペラと喋り出す。


「昨日の夜、俺がリビングでストレッチしてたら親父が近寄ってきたんだよ。俺も柔らかいんだぞ、なんて言って張り合った結果がコレ」

「な……」

「起き上がって伸びた時に、ピキッと。バカだよなぁ」

「バ、バカって……あんたねぇ」

「だって俺、親父がストレッチしてるとこなんて見たことねーもん。昔柔らかかろうが、しばらくやらないうちに硬くなるっつうのに」
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