晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
窓を背に座っている康介が、背中越しに外を親指で差した。


「夜だったから近くの病院どこも閉まっててさ、そこの病院に緊急で駆け込んだんだよ」


指差す先には、グランドを挟んで建つ総合病院。

去年の冬、部活中に先輩とぶつかって怪我をした康介が治療を受けた病院でもある。

ついさっきもサイレンの音が聞こえてきたような、そうじゃなかったような。(気分が沈んでたからはっきりと覚えてない)


「長く入院するの?」

「いや。2、3日で退院できるだろうって、医者が」


これに懲りて歳を自覚してくれればな、と憎まれ口を叩く康介。

口が悪いよと目を眇めると、康介は悪戯に笑った。




康介のおかげで少し浮上した気分は、その日の放課後、再び叩き落とされた。


「12.38です」


100メートルを走り抜き、ストップウォッチを握るトモちゃんにタイムを尋ねても、返ってきたのは私が望む答えではなかった。

監督に縮めろと命じられたタイムは、数を減らすどころか増えるばかり。
< 170 / 386 >

この作品をシェア

pagetop