晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
仕方ないじゃん、テスト前に一夜漬けするのが精一杯なんだから。と、これは言えない。他の先生に聞かれたら怒られそうだもん。


「で、どうしたんだ? ただ雑談しに来たってわけじゃないんだろ?」


体を軽く仰け反らせたサトタツの椅子が、ギッと軋む。

私はちょっと目を瞬かせて、それから顎を引いた。


「ちょっと聞きたいんだけど」

「なんだ?」

「1年生の中に“リョウタ”って子、いる?」

「……は?」


私の問いに、サトタツが素っ頓狂な声を上げた。

その反応は想定済みで、用意していた文言を繋げる。


「私の知り合いかもしれないんだけど、名前しかわかんなくて。いきなり1年生の教室に押し掛けるわけにもいかないから、来たの」

「……知り合いのくせに、なんで名前しかわかんねぇんだよ」

「それ、は……」


真面目な顔をしたサトタツに尋ねられ、思わず口ごもってしまう。


なんて言うのがいいんだろう。

いつも適当なサトタツがまさかこんなふうに突っ込んでくるとは思わなくて、この先は考えてなかった。
< 280 / 386 >

この作品をシェア

pagetop