晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
チョークの粉がついた手をパンパンと払いながら、何気なく真田が言う。

それは私の頭にはなかった可能性で、真っ暗な行き止まりに少しだけ光が灯った気がした。




掃除が終わり、帰り支度をしていた私の机に南山がやってきた。


「登坂、“リョウタ”って人を訪ねまくってるんだって?」

「あー……。うん、まぁね」


まさかこんなところまで話が及んでいるとは。

リョータに伝わるというメリットもあるとわかっていても、いざこんなふうに話題に上げられると恥ずかしい……。


「先生のところにも行ったのか?」

「え……?」

「だから、先生だよ。いるぞ、“リョウタ”って名前の先生」

「嘘!?」


先生は考えつかなかった。

そっか、生徒とは限らないんじゃん。先生だって内部の人間だし、いくらでも靴箱に入れる機会はある。
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