晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
中から低い声で応答があり、私は心拍を大きく弾ませてドアに手をかけた。


「失礼します! 志村良太先生はいらっしゃいますか」


ぎゅっと目を瞑って、一息で言い放つ。

室内はクーラーがよく効いていて、冷気がするりと肌を撫ぜた。


「僕が……志村ですが」


鼓膜を震わせられた言葉に、ゆっくりと瞼を持ち上げる。

視界が鮮明になって、1人の男の人を捉えた。


「何かご用ですか?」


……え?

講師室の奥のデスクにいる志村先生は、白髪で、ぽってりしてて……かの有名な元将棋棋士を彷彿させるような人だった。

あまりに予想外の人物に、唖然としてしまう。

志村先生って、こんなにおじいちゃん先生だったの……!?


先に教えといてよ南山! と内心で噛み付くも、単に“リョウタ”という人物を当たっているということしか知らなかったんだろうから仕方ない。
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