晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「……っ!?」


声が届いたのか、そこにいる人物が私に気付いてこちらを向いた気配がした。

次第に視界がクリアリーになって、そこにいる人の姿が鮮明に映し出される。


靴箱は各クラスごとに出席番号順に割り振られている。頭文字が『と』である私の周りは、同じクラスの子ばかりだ。

その一角に、見たこともない女の子が1人。


「あなた……」


私が口を開いた瞬間、彼女は弾かれたように駆け出した。


「待って……!」


昇降口を出ていこうとするところを、瞬時に追いついて腕を掴む。

細い、華奢な腕。


「ちょ……離してよッ!」


逃げるのを阻まれた彼女は、振り返ってキッと私を睨みつけた。

彼女は私よりも小柄で、下から睨まれる形になる。

憎悪を滲ませたような目に思わず怯みそうになるけど、ここで引き下がってなんていられない。


「ごめん、離せない。……あなた、どうして私の靴箱の前にいたの?」

「…………」
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