晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
勝手知ったる様子でロビーを横切り、ちょうど降りてきたばかりのエレベーターに乗り込んだ彼女。

その箱に乗った人は他におらず、細く長い指で『4』のボタンが押されランプが点灯したので、行先が4階だということだけはわかった。


息も出来ないような重苦しい空気の中、必死に頭を整理する。

目の前にいる彼女はリョータのことを知っていて、彼のことを訪ねた私をここに連れてきた。

でも、どうして? どうして……病院なの?


学校の隣にある、大きな病院。

グランドを挟んで隣にある校舎にまで救急車のサイレンなんかはよく届いているし、その存在を感じることは学校生活において多々ある。

でもここは、康介がケガをしたときに駆け込んだとか康介のお父さんがぎっくり腰になって入院しただとか、私にとってはそれくらいの印象のものでしかなくて。


「…………」


得体の知れない不気味な何かが、足元に忍び寄っている気配がした。




エレベーターを降りると、すぐにナースステーションが見えた。やっぱり慣れた様子で彼女がそこの窓口に寄り、置かれている用紙にペンを走らせ始める。
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