晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
顔を上げてから名乗ると、リョータのお母さんが目を丸くした。


「あら……じゃあ、あなたが……」


声を詰まらせたリョータのお母さんに、今度は私が目を見開く番だった。




同じフロアにあるデイルームに移動し、机を挟んでリョータのお母さんと向かい合った。

他の利用者はおらず、私のことをあまりよく思っていない様子の彩音ちゃんは帰ってしまったので、静かな空間に2人きりだ。

予想外の連続に、何だか地に足がついていない感じ。ふわふわして、だけど地面に根を張った現実が私の足を掴んで、深い沼に飲み込もうとする。


「登坂さん」


机に視線を落としていた私の頭上から、優しい声が降る。

頭の中を渦巻く色々な思いを振り切るように顔を上げると、リョータのお母さんと視線が絡んだ。

それから、深々と頭を下げられる。


「うちの子と……崚太と、お友達になってくれてありがとう」
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