晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
頭を下げられる理由が見つからなくて、私は慌てて首を振る。


「そんな! むしろお礼を言うのはこっちのほうで……! だから、お顔上げてください!」


私はリョータのお友達になってあげたわけじゃないんです。私が望んでリョータとの関係を築いたんです。だから、そんなふうに頭を下げていただく必要はありません。

矢継ぎ早に言葉を投げると、リョータのお母さんは少し面食らった様子で、それでもすぐに目尻を下げた。


「聞いていた通り、真っ直ぐな子なのね」

「え……?」

「崚太がよく話してくれたの。とっても素敵な女の子がいるんだって」


長い睫毛を伏せて、リョータのお母さんは静かに話し始めた。


「中学3年生の時に心臓の病が見つかって……崚太は入院を余儀なくされた。推薦で決まっていた成城高校への進学も、断念せざるを得なかったの」

「うちに推薦って……何の、ですか……?」

「あなたと同じ、陸上よ。……和泉崚太って名前、ご存じない?」
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