晴れ渡る空の下で、君のために風となる。
「それから、あの子は治療に前向きになったわ。きつい治療も、頑張って耐えてた」

「っ、はい……」

「それでも、病状が悪化してしまって……より設備の整っているこの病院に転院することになったの」


成城の隣だけど、大丈夫? そう尋ねたお母さんに、リョータは屈託なく笑ったという。


「崚太ね、今はちょっと眠っちゃってるけど……1ヶ月くらい前までは、普通の病室にいたのよ。4人部屋の、窓側。そこから、成城のグランドがとてもよく見えるの」

「……もしかして、リョータは」

「えぇ。あの子もびっくりしてた。あの大会でフィールドの上で輝いていた女の子が、まさか転院先の隣のグランドで走ってるなんて」


リョータは、一体どこから私の走る姿を見てるんだろう。それは、考えそうになっては打ち消していた一つの疑問だった。

考えても仕方のないことだ、リョータはどこの誰だか明かせないと言っていた。そう自分に言い聞かせて、リョータの素性を探ろうとしなかった。
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